研究課題/領域番号 |
23591350
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422770)
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研究分担者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707)
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80597865)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | グルココルチコイドレセプター / エネルギーバランス / ニューロペプタイドY / 視床下部 |
研究概要 |
本研究の目的は視床下部弓状核のニューロペプタイドY(NPY)ニューロンに発現するグルココルチコイドレセプター(GR)のエネルギーバランスにおける役割を明らかにすることである。そのために、NPYニューロン特異的にCreを発現するAGRP-CreマウスとGR遺伝子座をloxPサイトではさんだGR flox/floxマウスの交配を行い、NPYニューロン特異的にGRをノックアウトしたマウスを作成してその表現型を解析する。現在までにGR +/flox:AGRP-CreマウスとGR flox/floxマウスの作成が終了し、両者の交配の準備が整った。また、in vivoの特性を維持したマウス視床下部器官培養を用い、グルココルチコイドアナログであるデキサメサゾンがNPYおよびAGRP mRNAの発現を有意に増加させること、デキサメサゾン存在下でのみインスリンがNPYおよびAGRP mRNAの発現を有意に低下させることをRT-PCRを用いて確認した。さらにエネルギーバランスの破綻に視床下部の小胞体ストレスが関与しているという仮説を立て、マウス視床下部器官培養の培養液中に小胞体ストレス誘導剤であるタプシガルギンを加えて検討を行った。その結果、タプシガルギン投与下ではデキサメサゾンによるNPYおよびAGRP mRNAの発現増強作用が減弱し、インスリンによるNPYおよびAGRP mRNAの発現減弱作用も消失することを見出した。以上の結果は視床下部の小胞体ストレスはGRのシグナルを阻害することでエネルギーバランスに影響を与えていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPYニューロン特異的にGRをノックアウトしたマウスの作成の準備を整えるとともに、マウス視床下部器官培養でGRシグナルによるNPY, AGRP発現調節の基礎的検討を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
GR +/flox:AGRP-CreマウスとGR flox/floxマウスを交配し、得られた(1) GR flox/flox:AGRP-Cre(ホモ接合体)マウス、(2) GR +/flox:AGRP-Cre(ヘテロ接合体)マウス、(3) GR flox/flox(野生型)マウスに通常食を与え、摂餌量、体重、糖代謝(ブドウ糖負荷試験、血糖値、インスリン値)、インスリン感受性(インスリン負荷試験)を検討する。さらに生後4週から高脂肪食を投与し、摂餌量、体重、糖代謝、インスリン感受性をホモ接合体マウス、ヘテロ接合体マウス、野生型マウスで比較検討する。生後16週の時点でマウスを屠殺し、脳を取り出して視床下部におけるNPY、 AGRP、POMC mRNAの発現をin situ hybridization法およびRT-PCR法を用いてホモ接合体マウス、ヘテロ接合体マウス、野生型マウスで比較検討する。野生型マウスの視床下部器官培養においては小胞体ストレスがGRのシグナルを阻害する機序を解明する目的で、小胞体ストレス誘導剤のタプシガルギンが、(1)GRαおよびGRβの発現、(2)GRの細胞質から核内への移動、(3) GRのリン酸化に及ぼす影響を検討する。また、小胞体ストレスがNFkBやJNKシグナルを介してGRのシグナルに影響を及ぼしている可能性も考慮し、NFkBやJNKのシグナルを阻害する薬剤を培養液に加えた条件下で小胞体ストレスがGRシグナルやNPY、 AGRP mRNAの発現に与える影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ノックインマウス、ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスの維持、繁殖に15万円。視床下部器官培養、in situ hybridization法、免疫染色法、ウエスタンブロット法、血中ホルモンの測定に必要な各種試薬に100万円。
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