研究課題/領域番号 |
23591350
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422770)
|
研究分担者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707)
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80597865)
|
キーワード | エネルギーバランス |
研究概要 |
グルココルチコイド受容体(GR)の遺伝子がloxP配列ではさまれたノックインマウスとニューロペプタイドY(NPY)ニューロン特異的にCreを発現するトランスジェニックマウスを交配し、NPYニューロン特異的なGRノックアウトマウスが得られた。同マウスに4週齢から高脂肪食を投与すると野生型マウスより有意に体重が減少すること、また内臓脂肪重量が有意に低下することが明らかとなった。以上の結果はNPYニューロンに発現するGRがエネルギーバランスを維持するのに必須の存在であることを意味している。一方、マウス視床下部器官培養を用いた検討では合成グルココルチコイドであるデキサメサゾン投与によるNPYおよびAgouti-related peptide (AgRP) mRNA発現の増強が小胞体ストレスを誘導するタプシガルギンあるいはトニカマイシンを培養液に加えることにより有意に減弱すること、タプシガルギンが炎症系のシグナルであるNFkB-p65を活性化すること、NFkB-p65の阻害によりタプシガルギンによるNPYおよびAgRP mRNA発現減弱がキャンセルされることが明らかとなった。また、タプシガルギンはMAPK (P38)も活性化するとともにデキサメサゾンによるGRのリン酸化 (Serine 211)も減弱させること、MAPK (P38)の阻害によりGRのリン酸化 (Serine 211)の減弱がキャンセルされることも明らかとなった。これまでの研究からカヘキシーや肥満症の発症に視床下部の小胞体ストレスや炎症が関与していることが示唆されているが、今回の検討から視床下部の小胞体ストレスが炎症系のシグナルを活性化すること、また小胞体ストレスは炎症系のシグナルを介して視床下部のGRを介したシグナルを阻害することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルココルチコイド受容体(GR)の遺伝子がloxP配列ではさまれたノックインマウスとニューロペプタイドY(NPY)ニューロン特異的にCreを発現するトランスジェニックマウスを交配し、NPYニューロン特異的なGRノックアウトマウスが得られたこと、同マウスの解析が順調に進んでいること、マウス視床下部器官培養を用いた検討からもGRの解析が進んでいることから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
NPYニューロン特異的なGRノックアウトマウスに通常食を与え、体重の変化を野生型マウスと比較検討する。また、通常食あるいは高脂肪食を与えたNPYニューロン特異的なGRノックアウトマウスの摂食量、エネルギー消費を野生型マウスと比較検討する。また、NPYニューロン特異的にGRがノックアウトされていることwZ/EGトランスジェニックマウスを用いて検討するとともに、GRのプローベあるいは抗体を用いたin situ hybridization法、免疫染色法により視床下部のGRの発現を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ノックアウトマウス、ノックインマウス、トランスジェニックの維持、繁殖。 視床下部器官培養、in situ hybridization、免疫染色法、ウエスタンブロット法、血中ホルモン測定。 学会発表および論文投稿の費用。
|