研究課題
本研究は下垂体機能低下症において我々が見出し、最新版のWilliamsの教科書にも新たな疾患概念として記載された「抗Pit-1抗体症候群」を中心に解析し、新たな診断・治療方法へ展開する事を目的とした。対象疾患群として、遺伝子変異を認めない小児発症下垂体機能低下症群や、原因不明とされる下垂体機能低下症群および自己免疫が原因と考えられるACTH単独欠損症患者やIgG4関連下垂体炎患者において、抗Pit-1抗体のスクリーニングを行った。しかし、これらの疾患群では抗Pit-1抗体を認めず、全く違う疾患概念であることが改めて確認された。さらに抗Pit-1抗体の意義について検討したところ、抗Pit-1抗体による液性免疫の関与は認められなかったが、患者血中にPit-1反応性T細胞を認め、細胞障害性T細胞(CTL)の臓器浸潤を認めたことから、本症候群の発症原因にはPIT-1蛋白に特異的に反応するCTLが強く関連することを新たに見出した。すなわち、抗Pit-1抗体は疾患診断のマーカーであり、原因としてはCTLが発症のメカニズムを担っていることが明らかになった(2013全米内分泌学会発表、および論文投稿中)。今後さらなる下垂体機能低下症の原因検索のためには自己抗体の探索では不十分で、CTLを検出するELISPOTアッセイ法を用いたスクリーニングが必要であることが示唆された。さらに、多臓器に障害をもたらし自己免疫の関与が強く示唆されるIgG4関連下垂体炎患者に関して検討した。IgG4関連下垂体炎に関してこれまでの報告の中で最も多い7症例での下垂体生検組織を詳細に検討し、頻度がこれまでの少数例の解析結果より多いこと、および病理所見に「花むしろ構造」を認めるが、「閉塞性静脈炎」を認めないことが特徴的であることを初めて見出し報告した(EJE 2013)。
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