甲状腺癌研究で頻用されている癌細胞株FRO、WRO、TPC1、KTC1、KTC2、KTC3、ACT1、8505Cを入手し、ヌードマウスでの腫瘍形成能を確認したところ、FRO、KTC3、ACT1、8505Cで腫瘍の形成が確認された。マトリゲルを追加してさらに検討したところ、必要な細胞数は少なくなるものの、細胞種に変化はなく、マトリゲルが新たに腫瘍形成能を付与する訳ではないことが示唆された。 次に、現時点で固形癌の癌幹細胞マーカーと言われている表面抗原:CD13、CD24、CD44、CD90、CD133、CD166、c-kit、SSEA-1の発現とALDH1活性を、すべての細胞株で検討した。マウスでの腫瘍形成能と相関した表面抗原の発現パターンは確認できなかった。 また、すべての細胞株で、特殊な表面処理をした細胞培養プレートと無血清培地を組み合わせたスフィア形成アッセイを、ヌードマウスでの腫瘍形成能と比較検討したところ、非常に高い相関を示すことが分かった。 そこで、腫瘍を形成する細胞株FRO、KTC3、ACT1、8505Cを用い、表面抗原の発現量によって細胞をソートし、それら細胞をそのまま直接上記スフィアアッセイに利用するという実験系を確立した。現時点で、FRO細胞において、ALDH活性の高い細胞は、ALDH活性陰性の細胞に比べ、非常に高いスフィア形成能を持つことが分かった。これは、甲状腺癌において、ALDH活性が癌幹細胞のマーカーの一つである可能性を示唆している。
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