研究課題
肥満症や糖尿病などの生活習慣病は、メタボリック症候群という内臓脂肪型肥満が起因となるが、近年これらの病態に免疫炎症反応が関与していることが注目されている。その分子的な機序を明らかにするため、炎症反応に重要な免疫プロテアソームの発現に着目した。本研究では、動物モデル及び細胞実験の両面から内臓脂肪炎症での免疫プロテアソームの役割を解明し、肥満症及び糖尿病等の生活習慣病発症の予防法及び治療法を確立することを目的とする。免疫プロテアソームノックアウトマウスの入手遅延のため、まず、病態が改善することがすでに知られているインフラマソーム関連遺伝子改変マウスを用い、免疫プロテアソームの発現との相関性について検討した。一つ目の動物モデルとして、高脂肪食負荷により脂肪肝を誘導したメタボリック症候群マウスを用いた。これにより、脂肪蓄積の多い肝臓では免疫プロテアソームの発現が遺伝子レベルで増強されていることが確認された。一方、一部のインフラマソーム分子欠損マウスでは、顕著に脂肪肝が改善され、同時に肝臓における免疫プロテアソームの発現も減弱されていた。さらに免疫染色法を用いたタンパク質レベルでの発現の検討の結果、遺伝子発現との相関性が認められた。次に、アプリポプロテインE(ApoE)欠損マウスに西洋食負荷を行い、動脈硬化を誘導し、動脈硬化巣における免疫プロテアソームの発現を遺伝子レベルで解析した。その結果、病態が悪化したサンプルでは顕著な発現増加が見られたのに対し、病態が改善したサンプルでは免疫プロテアソームの発現が顕著に減少していた。以上のことから、メタボリック症候群のモデル病態において、病態の悪化と免疫プロテアソームの発現増強との間に相関があるということがわかった。今後は入手が遅れていた免疫プロテアソームノックアウトマウスを用いて更なる検討を行う予定である。
3: やや遅れている
申請者の前所属である米国ジョーンズホプキンス大学にて、当研究課題で利用する遺伝子改変マウスの繁殖に問題が生じ、予想よりマウスの輸送に遅れが生じた。この遺伝子改変マウスを利用して病態モデルの作製を行う予定であったが、予定を変更し、病態の状態に顕著な差が出ている他の遺伝子改変マウスを利用して、病態における免疫プロテアソームの発現にも差が出ているか検討し、当研究の目的をサポートする実験データを集めることにした。年度末に米国のマウスが到着したので、当初の予定であった病態モデルは現在作製中である。
研究計画の遅れを取り戻すために、免疫プロテアソーム欠損マウスの繁殖量を増やして対応し、脂肪肝等の病態モデルを作製し、その病態を野生型のマウスのものと比較検討していく。また、臓器・細胞特異的なトランスジェニックマウス作製のため、Cre-floxシステムを利用した免疫プロテアソームトランスジェニックマウスの作製を始める。
主にトランスジェニックマウス作製の費用にあてる予定である。また、病態モデルの解析のために、リアルタイムPCR用の試薬や免疫染色やフローサイトメトリー用の抗体等の試薬を購入する予定である。その他、チューブやチップなどのプラスチック消耗品、学会出席用の旅費、論文の校正経費、動物管理費などにあてる予定である。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 420 ページ: 72-77
American Journal of Pathology
巻: 178 ページ: 725-732