研究課題
内臓脂肪型肥満が起因となって起こるメタボリック症候群は、肥満症・糖尿病・動脈硬化などの主要な原因である。近年、免疫・炎症反応がそれらの病態に関わるという報告が増加しており、詳細な機序はまだ不明であるが、新たな治療標的として注目されている。本研究では、自己免疫疾患やウイルス感染で注目されている免疫プロテアソームという蛋白質分解酵素が、肥満などの炎症に関与しているのではないかという仮説の下、免疫プロテアソームを欠損したマウスを利用して、その役割を解明することを目的としている。平成24年度に、野生型と免疫プロテアソームの遺伝子改変マウスに高脂肪食負荷を行い、特に免疫プロテアソームのサブユニットの一つであるLMP7の欠損マウスのフェノタイプが顕著であったので、このマウスを中心に解析を行った。LMP7欠損マウスは、摂食量が野生型とほぼ同じにも関わらず、内臓脂肪(精巣上体・腸間膜・腎周囲)の蓄積が野生型と比較して顕著に減弱していた。血糖値や血清中の総コレステロール・中性脂肪も同様に減弱していた。また、通常食・高脂肪食の違いに関係なく、耐糖能やインスリンの感受性も良好であった。一方で、高脂肪食負荷8週では、脂肪肝形成に顕著な差はなかった。骨髄移植のモデルで、炎症反応において重要な役割を持っている血球系のLMP7と、組織側のLMP7のどちらが脂肪蓄積や体重増加に関わっているのかを検討したところ、両方とも重要であることがわかった。内臓脂肪における遺伝子発現を解析したところ、TNF-alphaやCCL8ケモカインなどで発現の差がみられた。また、抗炎症性のアディポカインであるアディポネクチンの遺伝子発現がLMP7欠損マウスの内臓脂肪において、その発現が顕著に増強されていた。LMP7欠損マウスの糞中の脂肪含有率が高いことも判明し、現在、さらに深く解析している。
3: やや遅れている
元々の仮説で、炎症における免疫プロテアソームの役割に着目していたが、炎症以外にも役割があることがわかり、解析する項目が顕著に増えたため。
免疫プロテアソームが炎症以外にも様々な役割があることがわかり、内分泌・代謝における役割を中心に解析する予定である。
平成23年度に自治医科大学教育・研究棟が完成し、動物実験を行う場所の引越等があった。動物を飼育する環境に大きな変化があり、再現性を取るために予定より動物実験に時間を要した。現在、採取した動物の組織サンプルを利用し、遺伝子発現等の解析中である。未使用額について、以下の使用を計画している。本研究の動物実験で得た動物の組織サンプルを利用して、より詳細な遺伝子発現や蛋白質発現などの解析を行うため、mRNA逆転写酵素やリアルタイムPCR用の試薬を購入し、蛋白質発現解析のため、ウェスタンブロッティング用の試薬を購入する予定である。
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http://www.jichi.ac.jp/bioimaging/