研究課題/領域番号 |
23591360
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
本田 伸一郎 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40257639)
|
キーワード | ステロイドホルモン / 転写制御 / 性分化 |
研究概要 |
アロマターゼ遺伝子の脳特異的プロモーターに存在するaro-Bサイトに結合するLhx2は、Deaf-1と相互作用して高い転写活性化を示す。培養細胞におけるレポーターアッセイにおいて、Deaf-1のみでは転写活性化は生じない。また、胎仔間脳部の初代神経細胞を用いたsiRNA実験においてLhx2をノックダウンすると、内因性のアロマターゼの発現が抑えられることより、Deaf-1による転写増強はLhx2を介して行われると考えられる。さらに、脳特異的なアロマターゼの転写制御メカニズムを解析するためDeaf-1タンパク質に注目し、様々な変異体を作成して転写活性化能の測定による機能ドメインの同定を行った。種々のDeaf-1のミュータントをのなかで、Deaf1-mutBC(アミノ酸残基150-471)は野生型と同程度にLhx2の転写活性化を増強した。Deaf1-mutBCから、さらに150-234のアミノ酸領域を欠損させると転写活性増強能が減少することから、この領域がLhx2を介した転写活性増強に関わっていると考えられた。また、Deaf-1の転写活性化領域を同定するために、GAL4/UASシステムを用いて様々なDeaf1断片の転写活性化能を調べた結果、アミノ酸残基1-149や374-450などの複数の領域に、転写活性化能が存在することが明らかとなった。しかしながら、Lhx2を介した転写活性の増強を認めるmutBCフラグメント(GAL4DBD-mutBC)には、GAL4/UASシステムでは転写活性化が認められなかった。さらに、GAL4DBD-mutBCと同時にLhx2をコトランスフェクトすると転写活性化が認められるようになった。これらのことよりDeaf-1とLhx2のタンパク質間相互作用によって引き起こされる変化が、転写活性化に必要である事が推測される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内因性アロマターゼを発現する細胞モデルとして、すでに確立されている胎仔間脳部の初代神経細胞を用いる方針に定めたため、転写因子の機能解析を有効に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、Deaf1の機能に焦点を当て、脳特異的アロマターゼ遺伝子の発現制御を軸として研究を進める。特にDeaf1の翻訳後修飾による機能制御の可能性を検討する。申請者は、Deaf1がSUMO化修飾因子の1つであるUbc9と相互作用することを現在までの研究にて確認している。SUMO化は様々な細胞内イベントに関与することが知られている。一次構造の解析により、Deaf1にもSUMO化される可能性のあるコンセンサス配列が3カ所存在していた。現在、この3カ所に人為的な変異を導入し、SUMO化が生じない変異Deaf1の発現プラスミドを作成している。次年度は、まずこれらの変異Deaf1が転写活性化に及ぼす影響を中心に調べることで、Deaf1の機能とSUMO化との関係性を明らかとすることに重点をおいて実験を進める。現時点までの研究成果からは、Lhx2とDeaf1の相互作用が引き起こす構造の変化が、転写活性化に必要であることが示唆されているので、SUMO化やアセチル化などの修飾が、Deaf1とLhx2のタンパク質間相互作用や構造変化に関係している可能性も含めて検討していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|