研究課題/領域番号 |
23591361
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
今村 美菜子 独立行政法人理化学研究所, 内分泌・代謝疾患研究チーム, 研究員 (00596124)
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研究分担者 |
前田 士郎 独立行政法人理化学研究所, 内分泌・代謝疾患研究チーム, チームリーダー (50314159)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 遺伝子 |
研究概要 |
1.培養細胞系におけるUBE2E2作用の解明;マウス由来膵β細胞株MIN6細胞を用いて特異的siRNAによるノックダウンがインスリン分泌に及ぼす効果を検討した。特異的siRNAs処理MIN6細胞では、コントロール細胞に比し内因性Ube2e2mRNAは約90%抑制された。25mMグルコース、50mM KCl、1uMグリベンクラミド存在下でのMIN6細胞のインスリン分泌は5.3~7.5倍に増加し、Ube2e2ノックダウンはいずれの条件下でもこのインスリン分泌に影響を及ぼさなかった。そこで、マウスUbe2e2発現アデノウイルスベクター(adeno-Ube2e2)によるUbe2e2過剰発現系を構築した。MIN6細胞にadeno-Ube2e2を30 m.o.iで感染させるとUbe2e2mRNAは内因性Ube2e2の約50倍に増加した。今後はUbe2e2過剰発現系でインスリン分泌を検討する。2.遺伝子導入動物の作成;Ube2e2のin vivoでの糖代謝における役割を解明するために膵β細胞特異的Ube2e2トランスジェニックマウスを作成した。ラットインスリンプロモーターの下流にマウスUbe2e2を挿入した発現ベクターを構築、ES細胞にマイクロインジェクションを行った。コピー数の異なる2系統が樹立されたが、現時点では通常飼育下において外見上明らかな異常は観察されていない。今後は糖代謝を中心に表現型解析を行う。3.ヒトUBE2E2領域の遺伝子多型検索;UBE2E2領域内で2型糖尿病疾患感受性に直接影響する原因多型を同定するため、まず96名の2型糖尿病患者由来のゲノムを用いて、ヒトUBE2E2全長、上流10kbp、下流500bpを含む約400kbの塩基配列をダイレクトシークエンス法で解析した。629個の遺伝子多型が認められ,うち123多型はデータベースに登録されていない新規の多型であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は新規2型糖尿病関連遺伝子UBE2E2の膵β細胞における機能を検討し、加えてUBE2E2多型による疾患感受性のより詳細な機序を解明することにより、2型糖尿病発症進展機序を明らかにすることである。UBE2E2の膵β細胞における機能の解析については平成23年度の研究計画である1)培養細胞系でのUbe2e2の役割の検討、2)遺伝子改変マウスモデルの作成までほぼ計画通りに順調に進行している。3)ヒトUBE2E2領域の新規遺伝子多型の検索および機能性多型の同定についてはUBE2E2領域のリシークエンスが終了し、現在は2型糖尿病患者群、対照群のゲノムサンプルを用いてマルチプレックスインベーダー法による遺伝子型タイピングが進行中である。以上のことから、現時点ではほぼ計画通りに研究が進行していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.培養細胞系におけるUBE2E2の作用の解明;Ube2e2過剰発現MIN6細胞を用いてUbe2e2がインスリン分泌に及ぼす効果を検討していく予定である。2. 膵β細胞特異的Ube2e2トランスジェニックマウスの表現型解析;通常食飼育下、あるいは高脂肪食飼育下における、糖代謝を中心とした観察を行う。(血糖値、体重の経過観察および糖負荷試験)。また、トランスジェニックマウスより単離したラ氏島のインスリン分泌能の評価も行う。3. ヒトUBE2E2領域の2型糖尿病疾患感受性機能性多型の同定;23年度に行ったダイレクトシークエンスでの解析で得られたUBE2E2領域内の遺伝子多型に対し、2型糖尿病患者群、対照群のゲノムサンプルを用いてマルチプレックスインベーダー法で遺伝子型タイピングを行い、UBE2E2領域およびその周辺において2型糖尿病と最も強く関連する機能性多型候補となる遺伝子多型の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスの動物飼育費、交配費、マウス表現系解析は外部に委託しているため、24年度の研究費は主に23年度に作製した膵β細胞特異的発現マウスの動物飼育費、交配費、マウス表現系解析の外部委託費用に使用する。また、一部は培養細胞や単離ラ氏島を用いたインスリン分泌の解析や遺伝子多型のタイピングに必要な試薬の購入にあてる。
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