研究課題
1.遺伝子導入動物の作成および表現型解析 in vivoでの糖代謝における役割を解明するために膵β細胞特異的Ube2e2トランスジェニックマウス(β-Ube2e2-Tg)を作成した。膵β細胞特異的プロモーター(rat insulin promoter) の下流にマウスUbe2e2を挿入した発現ベクターを構築し、ES細胞にマイクロインジェクションを行った。コピー数の異なる2系統のβ-Ube2e2-Tgが樹立された。β-Ube2e2-Tg より単離した膵島でのUbe2e2mRNAの発現量はコントロールマウスの内因性Ube2e2mRNA発現量のそれぞれ9.4倍、12.5倍であった。2系統のβ-Ube2e2-Tgとコントロールマウスを通常飼育下において32週齢まで観察したが、血糖値、体重ともにβ-Ube2e2-Tgとコントロールマウスとの有意差はなかった。経口糖負荷およびインスリン負荷後の血糖値の測定も行ったがβ-Ube2e2-Tgとコントロールとの差は観察されなかった。現在はこれらのマウスをを高脂肪食下で飼育している。2.UBE2E2領域の遺伝子多型検索;UBE2E2領域内で2型糖尿病疾患感受性に直接影響する原因多型を同定するため、まず96名の2型糖尿病患者由来のゲノムを用いて、ヒトUBE2E2全長および上流10kbp、下流500bpを含む約400kbの塩基配列をダイレクトシークエンス法で解析した。その結果、626個の遺伝子多型が認められ,そのうち123多型はデータベースに登録されていない新規の遺伝子多型であった。626個のうち、すでに解析済みの148個を除いた478個の遺伝子多型のうち、インベーダー法での遺伝子型判定が可能な341の遺伝子多型について、現在2型糖尿病約8000人コントロール約3000人を用いて遺伝子型の判定を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は新規2型糖尿病関連遺伝子UBE2E2の膵β細胞における機能を検討し、加えてUBE2E2多型による疾患感受性のより詳細な機序を解明することにより、2型糖尿病発症進展機序を明らかにすることである。UBE2E2の膵β細胞における機能の解析については平成24 年度の研究計画である1)遺伝子導入動物の検討を主に行った。平成23年度に作成したトランスジェニックマウスモデルについては、目的の組織におけるUbe2e2mRNAの過剰発現を確認し、32週齢まで観察が終了した。すでに25年度の予定であった高脂肪食下での飼育観察を開始しており、動物実験に関しては計画は予定よりも早く進行している。また、2)UBE2E2多型の機能解析についてはUBE2E2領域のリシークエンスにおいて、626個という予想より多い遺伝子多型を認めたため、遺伝子型タイピングが未だ進行中である。以上のことから、現時点ではおおむね順調に研究が進行していると自己評価した。
1. 膵β細胞特異的Ube2e2トランスジェニックマウスの表現型解析;高脂肪食飼育下における、糖代謝を中心とした観察を行う。(血糖値、体重の経過観察および糖負荷試験)。また、トランスジェニックマウスより単離したラ氏島のインスリン分泌能の評価も行う。2. ヒトUBE2E2領域の2型糖尿病疾患感受性機能性多型の同定;24年度に引き続きUBE2E2領域内の遺伝子多型に対し、2型糖尿病患者群、対照群のゲノムサンプルを用いてマルチプレックスPCRインベーダー法で遺伝子型タイピングを行い、UBE2E2領域およびその周辺において2型糖尿病と最も強く関連する機能性多型候補となる遺伝子多型の同定を試みる。
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