研究課題/領域番号 |
23591381
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 文彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30402580)
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キーワード | STAT3 / 分子標的薬 / 白血病 / 抗癌剤 / 白血病モデルマウス |
研究概要 |
本年度は本薬剤作用機序の解明、本薬剤適合癌種の選択、及びマウスモデルでの薬効確認を行った。HepG2,H1650など細胞内で、JAK2、Srcなど上流キナーゼの種類に関わらず、そのリン酸化を阻害する事無くSTAT3のリン酸化が阻害されている事を確認した。 本薬剤が有効な癌種を同定するため、35種類の血球系細胞株で本薬剤の薬効を調べ、本薬剤が多彩な造血器悪性腫瘍に対し効果があり、中でもBCR-ABL、FLT3変異、JAK2変異を持つ腫瘍細胞は高率に本薬剤感受性である事を発見した。これらの変異では、その変異によりSTATの活性化が起こり、それが腫瘍細胞の生存に重要である事が、これまでの研究により確立されている。更にプライマリーの腫瘍細胞への本薬剤の効果を見るために、こうした変異を持つ白血病の患者より採取した白血病細胞をNOD/SCID/IL2-Rgammac-/- (NOG)マウスに移植したマウス白血病モデルを作成し(Ph+ALL 3例、 CML-BC T315I変異陽性 1例、FLT3/ITD陽性AML 1例)、これに対しOPB-31121(200~300mg)を投与し著明な腫瘍退縮効果(T/C: 4~58%)を確認した。この実験では腫瘍細胞の減少と同時にマウス正常造血細胞の回復を認めたため、本薬剤が正常造血細胞には増殖抑制が少ないことが予想された。そこでヒト正常臍帯血を移植したマウスを作成し、これに対する薬効を調べ、本薬剤がヒト正常造血細胞にはほとんど抑制効果がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本薬剤の作用機序に関しては最終的な作用点に関する疑問は残ったが、上流キナーゼではなくSTAT(あるいはその複合体)に対する作用であることを確認した。細胞株による検討で、本薬剤の適合癌種を同定し、プライマリー白血病細胞を免疫不全マウスに移植したモデルで、同定した癌種に対して本薬剤が有効であることを確認した。更に当初の計画になかったことであるが、本薬剤が正常造血には増殖抑制の少ない安全性の高い薬剤である可能性が示唆されたため、それをヒト正常臍帯血を免疫不全マウスに移植した系を用いて確認した。 白血病幹細胞に対する効果の検討もほぼ終了しており(結果については現時点では記載しない)、本研究は論文化を開始する段階になっている。
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今後の研究の推進方策 |
白血病幹細胞に対する効果を、免疫不全マウスにプライマリー白血病細胞を移植する系を用いて確認する。 これまでのデータをまとめて論文を作成し、海外雑誌に投稿し、本年度中の採択を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫不全マウス購入、白血病幹細胞ソーティングに必要な試薬購入、論文投稿、掲載にかかる費用、海外学会での成果発表費用、および論文投稿に際して要求される追加実験に必要な費用として使用する予定である。
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