研究概要 |
平成23年度はAML細胞株を用いて本剤がJAK2のリン酸化を阻害する事無くSTAT3のリン酸化を阻害している事を確認した。更に、NOGマウスにプライマリ白血病細胞を移植したPatient-derived xenograft (PDX)モデルを作成した(Ph+ALL 3例、 CML-BC T315I変異陽性 1例、FLT3/ITD陽性AML 1例)。これに対し経口的にOPB-31121を投与し著明な腫瘍退縮効果(T/C: 4~58%)を確認した。 平成24年度は35種類の血球系細胞株で本薬剤の薬効を調べ、本薬剤が多彩な造血器悪性腫瘍に対し効果があり、中でもBCR-ABL、FLT3変異、JAK2変異を持つ腫瘍細胞は高率に本薬剤感受性である事を発見した。これらの癌遺伝子は、STAT3/5の活性化を起こす事、それが腫瘍細胞の生存に重要である事が確立されている癌遺伝子であり、これらをSTAT addictive oncokinase (SAO)と名付けた。またヒト正常臍帯血を移植したマウスを作成し、これに対する薬効を調べ、本薬剤がヒト正常造血細胞にはほとんど抑制効果がないことを確認した。 平成25年度は本薬剤が他のキナーゼ阻害剤に対する治療抵抗性を克服する可能性について検討した。AMLの治療薬として開発中のFLT3阻害剤では白血病細胞自身、あるいは周辺細胞からのFLT3リガンドの分泌によりFLT3阻害剤抵抗性のSTATシグナルの活性化が生じ治療抵抗性につながる事が知られている。我々はMOLM13細胞(FLT3/ITD陽性)がFLT3リガンドを添加する事でFLT3阻害剤(Sunitinib)に対し治療抵抗性を示すのに対して、OPB-31121はFLT3リガンドの添加に影響されず抗腫瘍効果を示す事を示した。更にこれらのデータをまとめて海外雑誌に論文として発表した(Blood Cancer Journal,2013;3:e166)。
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