研究課題/領域番号 |
23591382
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
中山 享之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00456659)
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キーワード | 白血病ニッチェ |
研究概要 |
間葉系幹細胞は、骨髄微小環境のもととなるものである。我々は、fibroblast growth factor (FGF) 2が間葉系幹細胞を神経系細胞へ可逆的に移行させることを見いだした。それと同時に造血に必須であるCXCL12をはじめとする複数の因子発現を変化させ間葉系幹細胞の造血支持能力が喪失した。以上は、正常造血幹細胞-骨髄微小環境における観察であったが、この現象は白血病幹細胞-骨髄微小環境にもあてはまることをinvitroおよびin vivoで確認した。FGF2で処理された間葉系幹細胞は、ストローマ依存性の急性白血病cell lineであるTRL-01維持能力が有意に低下していた。慢性骨髄性白血病cell lineであるNCO2は、間葉系幹細胞上ではイマチニブ耐性となるが、FGF2処理間葉系幹細胞上ではその抵抗性が克服され静止期の細胞が減少した。次に白血病マウスモデルでAra-CとFGF2の併用効果を検討したところ併用群では、Ara-C単独群と比較して有意に脾臓サイズの縮小を認めた(脾臓に残存している白血病細胞数においてもとうぜんながら統計学的な有意差あり)が、骨髄に置ける白血病細胞数減少の差は軽度であった。現在、我々はこの差異について解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白血病細胞を支持する微小環境の機能がどのように制御されているかを解析することが必要と考え、その制御メカニズムについて研究を進めてた結果、fibroblast growth factor (FGF) 2が間葉系幹細胞を神経系細胞へ可逆的に移行させることを見いだした。それと同時に造血に必須であるCXCL12をはじめとする複数の因子発現を変化させ間葉系幹細胞の造血支持能力が喪失した。以上のアイデアは、世界でも報告例はほとんどなくユニークなもであること、さらにこの作用は、白血病マウスモデルにおいても有意な脾臓サイズの減少として確認されているため。
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今後の研究の推進方策 |
FGF2の作用は、骨髄と脾臓において差異があることが判明した。これを解明するため免疫染色やRT-PCRなどをもちいてFGF2処理後のCXCL12などのケモカイン発現に差があるかどうかを検討予定である。またこれは、悪性リンパ腫の化学治療に応用出来る可能性があるためリンパ腫マウスモデルを用いて検討予定である。またFGF2類似の活性をもつ低分子化合物をスクリーニングする。
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次年度の研究費の使用計画 |
NOGマウス(ヒト白血病マウスモデル、ヒト悪性リンパ腫マウスモデルの樹立のため)の購入、管理および薬剤 投与。組織学的な検索に研究費を使用することを計画している。FGF2の想定される立体構造をもとにNCBI (米国National Center forBiotechnology Information)データベースを用いて低分子化合物をスクリーニングする。候補となる低分子化合物は、NCBIより購入可能となる。該当する低分子化合物が存在しない場合には、大塚製薬株式会社の協力(連携研究者:杉本慶樹博士)のもと化学合成することも計画している。
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