研究課題/領域番号 |
23591383
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 正行 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90513820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | NFκB / T細胞 |
研究概要 |
(1)MOV10低発現細胞株の作成と検討;shRNA用レンチウイルスベクターにMOV10shRNAを組み込みウイルスを作成しJurkat T細胞株に感染させた。感染後限界希釈法により単一クローンとなったJurkat細胞のMOV10発現をウエスタンブロット(WB)法にて検出し、MOV10の発現が低下しているクローンを単離した。次に単離した細胞株におけるNFκBの活性化を検討した。MOV10の発現が正常のJurkat細胞と低発現細胞株をそれぞれCD3/28にて刺激しIκBαのリン酸化、発現量をWBにて比較したところ、両細胞間において刺激に対する反応に違いが認められなかった。κBプロモーター下で制御されたルシフェラーゼアッセイにおいても両細胞間でNFκBの活性化に違いが認められなかった。以上の結果よりMOV10はBcl10と結合するもののNFκBの制御にはかかわっていないことが分かりMOV10に関するこれ以上の実験は断念した。(2)レンチウイルスcDNAライブラリーによるスクリーニング;うまくいかなかった場合の対処として記載していた、レンチウイルスライブラリーを用いた計画を開始した。NFκBが常時活性化している遺伝子変異導入細胞株に対しレンチウイルスベースのcDNAライブラリーを導入し、NFκBが非活性化するような遺伝子を検索した。(3)CKIP-1の同定と機能解析;スクリーニングの結果、NFκBを負に制御する遺伝子候補が見つかった。そこで候補遺伝子のsiRNAを作成し、Jurkat細胞に導入しNFκBの状態を検索したところ、数種類のsiRNAでNFκBの上昇が認められたためそのうちの一つであるCKIP-1に注目して研究を進めることとした。まずJurkat細胞株にCKIP-1を導入しCD3/28にて刺激したところ、CKIP-1によりNFκBの抑制が認められ負に制御している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MOV10分子がNFκBの制御に関わっていないことが判明したため、年度途中よりレンチウイルスcDNAライブラリーを用いるスクリーニングを開始した。レンチウイルスcDNAライブラリーはあらかじめウイルスを作成し準備していたため、すぐにスクリーニングを開始することができた。恒常的にNFκBが活性化している細胞株に対し、NFκBが定常状態に戻ったクローンを単離し、組み込まれたcDNAの配列を読むことによりCKIP-1が同定できた。この間のスクリーニングが比較的順調に出来たため、結果的に時間のロスは最小限に抑えられ、同年度内にCKIP-1の解析を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
MOV10の検討をあきらめ、当初の研究計画を変更することとなったが、NFκBを負に制御する新規分子としてCKIP-1を同定することができたため、この分子の検討を進めていくこととする。既に過剰発現においてCKIP-1はNFκBを負に制御することが判明したため、次にCKIP-1 shRNAを作成しCKIP-1低発現Jurkat T細胞を作成し、T細胞受容体刺激後のNFκBの活性化を検討する。またCKIP-1がT細胞におけるNFκBの活性化のどの段階で働いているかを検討する。CKIP1とシグナリングコンポーネントの各段階の活性化変異体を共発現しNFκBの解析を行うことにより、CKIP-1がどの段階で働いているかを解析する。解析の結果、CKIP-1との結合パートナーが判明した場合、結合部位などの解析を共免疫沈降法を用いて検討することとする。またこの分子以外にもcDNAライブラリーのスクリーニングからもう一つ候補分子が同定されているため、CKIP-1の研究が遂行できない場合、そちらの分子の検討をすることが可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費120万に対し、ウエスタンブロット関連の抗体や試薬に40万、細胞培養に関連した培養液、FBS、培養用品等で30万、その他試薬、物品、文房具に30万円がかかる予定である。また交通費として20万円がかかる予定である。
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