研究課題
RUNX1がDNA損傷応答分子Gadd45aの発現を転写レベルで調節していること、そして、RUNX1のC端欠失変異体RUNX1dCは、RUNX1によるGadd45aの活性化を抑制することを明らかにした。また、RUNX1のC端変異を持つ骨髄異形性症候群患者では、骨髄単核球中のGadd45aの発現がRUNX1変異を持たない骨髄異形性症候群患者のサンプルと比較して有為に低下していることが分かった。この一連の研究結果をLeukemia紙にて発表した。新規のRUNX1遺伝子変異家系を見いだした。この変異は、野生型RUNX1bが453アミノ酸配列を保持するのに対して、283アミノ酸しかなく、それ以降のC末端を欠失している。これまでの研究より、このX283変異は野生型RUNX1の優勢阻害型変異体として機能する可能性が考えられた。そこで、RUNX1の転写の標的であることが分かっているc-mplプロモータールシフェラーゼコンストラクトを用いて、レポーターアッセイを行った。その結果、RUNX1X283は、RUNX1bによるc-mplプロモーターの活性化を抑制することが明らかになった。
3: やや遅れている
RUNX1ノックアウトマウスの繁殖が順調にいかず、このマウスを用いた研究を進める事ができなかった。しかし、RUNX1の新しい家族性変異を見いだすという新しい発見を得る事ができた。現在RUNX1ノックアウトマウスは順調に増殖しており、今後はこのマウスを用いた研究をすすめる予定である。
RUNX1のDNA損傷修復能における役割を明らかにするために、RUNX1ノックアウトマウス造血幹細胞のDNA損傷刺激(放射線照射、抗がん剤投与など)に対する反応を解析する。RUNX1X283変異の固有の機能を明らかにするために、RUNX1ノックアウトマウス造血幹細胞にRUNX1X283を導入し、骨髄移植実験をおこなう。RUNX1X283変異は野生型RUNX1bに対して、非常に協力なドミナントネガティブ効果を持っており、この変異の導入がRUNX1のがん抑制遺伝子機能を抑制することで、白血病の発症をもたらす可能性がある。
クロマチン免疫沈降ーシーケンス(ChIP-Seq)法を用いて、DNA損傷付与前後のRUNX1転写因子の標的遺伝子の変化を解析する。また、RUNX1ノックアウトマウス造血幹細胞を用いたDNA損傷修復アッセイを行う。情報収集と成果発表のために、国内国外の学会に出席する。
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Leukemia
巻: 26 ページ: 303-311
10.1038/leu.2011.202.
Immunol Lett.
巻: 136 ページ: 61-73