研究課題/領域番号 |
23591385
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 友亮 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 准教授 (20506307)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20177489)
織谷 健司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324762)
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キーワード | RUNX1 / 造血幹細胞 / DNA修復 |
研究概要 |
RUNX1のC末端欠失変異体(RUNX1dC)の生理作用を検討する目的で、マウスLineage-Sca1+cKit+細胞にRUNX1dCをレトロウイルスベクターを用いて導入した。その結果、RUNX1dC導入LSK細胞はサイトカイン存在下(SCF, Flt3-Ligand, TPO, IL-6)で一ヶ月以上培養可能であることが分かった。また、このRUNX1dC導入LSK細胞では、造血幹細胞の増殖活性に重要な働きを持つSTAT5のリン酸化が亢進していることが明らかになった。 RUNX1C導入細胞のDNA損傷修復能力を評価するため、RUNX1dCを導入したマウス細胞株32dcl3 (32D-RUNX1dC)を用いたリペアアッセイを行った。このアッセイ法は、特定のDNA損傷因子で処理した後の細胞のコロニー形成能力を測定することによって、テスト細胞のDNA損傷からの修復機能を評価するというものである。その結果、RUNX1dC導入細胞はトポイソメラーゼII阻害薬のVP-16投与後のコロニー形成能が低下していることが分かった。以上のことから、RUNX1dCはSTAT5のリン酸化を通してマウス造血幹/前駆細胞の増殖を促進すること、そして、DNA損傷の単鎖、二重鎖切断からの修復を抑制することによって白血病の発症へと導くことが示唆された。 RUNX1はマウスの二次造血の発生に必須の転写因子である。RUNX1自体が造血幹細胞から骨髄球系やリンパ球系への分化の運命決定機構に携わっている可能性が示唆された。造血幹細胞からの運命決定機構におけるRUNX1の役割を検討する目的でマウス胎児造血幹細胞と早期リンパ球前駆細胞での遺伝子発現プロファイルを比較したところ、クロマチン構造制御分子Satb1の発現が早期リンパ球前駆細胞で上昇していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RUNX1ノックアウトマウスの繁殖が、動物実験施設の汚染問題などで順調に進まず進展させることができなかった。しかし、細胞レベルの実験によって重要な知見を得ることができた。また、RUNX1の造血幹細胞での機能を見る目的で行った遺伝子発現プロファイルによって、新たな展開を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
RUNX1のDNA損傷修復メカニズムにおける役割をRUNX1変異体(RUNX1dCおよびX283変異体)を用いてさらに検討する。造血幹細胞からの運命決定機構におけるRUNX1とその関連分子の機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究により、RUNX1とその関連分子が造血幹細胞からの分化において未知の機能を有している可能性が示唆された。これらの分子の機能をさらに詳細に検討するため、RUNX1とその関連分子のノックアウトマウス造血幹/前駆細胞の遺伝子発現プロファイル解析を外部業者への受託研究として行う予定である。 研究成果発表、情報収集を目的とした学会参加費として使用する予定である。
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