研究課題
本研究はRUNX1の癌抑制遺伝子としての機能を解明することを目的として実施した。① DNAの一本鎖損傷および、DNA二重鎖切断修復におけるRUNX1の役割:造血幹細胞において、RUNX1のC端欠失変異はDNA二重鎖切断への修復応答を低下させることがわかった。② DNA損傷付与による、RUNX1の転写標的の変化および、結合蛋白の変化の解析:RUNX1は、DNA損傷応答分子Gadd45aを転写レベルで制御していることがわかった。またRUNX1のC端変異を有する骨髄異形成症候群患者では骨髄単核球中のGadd45の遺伝子発現量が低下していたことなどから、RUNX1変異を有する患者の白血病発症にはGadd45aの発現低下がDNA損傷蓄積などを引き起こしていることが示唆された。③ ストレス応答に関わるRUNX1の転写標的の造血幹/前駆細胞における機能解析:二次造血に必須の転写因子であるRUNX1の造血幹/前駆細胞における機能解析を行う上で、マウス胎児造血幹細胞と早期リンパ球前駆細胞の遺伝子発現プロファイルを比較したところ、クロマチン構造調節分子SATB1の発現が、リンパ球への分化とともに上昇することが分かった。平成25年度はこの研究を進めることで、造血幹細胞からのリンパ球初期分化におけるSATB1の機能の重要性を明らかにした(Immunity, 2013)。④その他:新規のRUNX1変異家系を見出し、その機能解析を行った。このRUNX1変異は、N端より283アミノ酸までしか有しない。機能解析の結果、この変異体が野生型に対してドミナントネガティブ体として働くことが明らかとなった。以上の事から、本研究を通してRUNX1は、DNA損傷とくにDNA2重鎖切断からの修復過程に重要な働きを有しており、RUNX1の機能抑制型変異がDNA損傷の蓄積と急性骨髄性白血病の発症をもたらす可能性が考えられた。
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Immunity
巻: 38 ページ: 1105-1115
10.1016/j.immuni.2013.05.014.