研究課題/領域番号 |
23591389
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
定 明子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90467655)
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研究分担者 |
松井 利充 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10219371)
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キーワード | 好酸球増多症候群 / チロシンキナーゼ / リン酸化プロテオミクス |
研究概要 |
平成24年度は、全国多施設から様々な原因の好酸球増多症患者を診療する医師からのコンサルトに対し助言や情報提供を行い、協力して臨床診断を行った。FIP1L1-PDGFRA(F-P)キメラ遺伝子陽性HESが疑わしい症例に対しては、RT-PCR法によるF-Pキメラ遺伝子検索を行い、F-Pキメラ遺伝子以外のPDGFRA関連骨髄系腫瘍が疑われる症例に対しては未知のキメラ遺伝子の検索を行った。 また、様々な好酸球増加症候群の患者既存検体からリン酸化ペプチドを抽出しnanoLC-MS/MSによる質量分析を行った大量(8000種類以上)のペプチド定量解析データについては、H23年度に引き続き多変量解析を行った。クラスター分析ではHES診断群と反応性好酸球増加症などHES以外の疾患群に大別され、要因配置分散分析ではF-Pキメラ陽性群と明らかな反応性好酸球増加症群との間にはリン酸化パターンに明らかな違いが認められた。この違いの要因をさらに探索することによりHESの個別化につながるバイオマーカー候補を特定することは可能と思われる。さらに詳細な解析を進めるため、得られた実験データとそれぞれの蛋白の機能との関連性やシグナル伝達経路での位置づけを行うための準備として、実験データに関連する蛋白の機能などの関連情報のデータベースを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、HES個別化に向けた研究計画はおおむね順調に進行している。質量分析実験データに関連する蛋白の関連情報のデータベースが完成し、専用の解析ソフトを使いて大量と実験データと情報データを組み合わせてデータマイニングを行う準備がほぼ整った。
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今後の研究の推進方策 |
(HESにおける診断バイオマーカー分子の検索) 様々な好酸球増加症候群の患者既存検体から抽出されたリン酸化ペプチドの質量分析データは、HESの診断や治療の反応性に関連する有用な大量の情報を含んでいる。専用の解析ソフトを用い、大量と実験データと情報データを組み合わせたデータマイニングの手法により、HES診断に有用な診断バイオマーカーの候補を抽出する。 (HESにおけるイマチニブ反応性関連分子の検索) 新規にイマチニブで治療を行ったHES症例において、イマチニブ投与前後の末梢血凍結保存検体からリン酸化ペプチドを抽出し、同様に質量分析を行いイマチニブ反応性関連バイオマーカー候補となる分子を探索する。さらに、この新規データから得られた結果が、先に抽出した疾患の診断バイオマーカー候補分子をどの位含み、どの程度診断が予測できるかを統計学的手法により評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は試薬などの消耗品と蛋白質量分析解析費用に使用される。また旅費や論文投稿に関わる費用なども研究費より使用する。 蛋白質量分析解析費用については複数の検体を同時に比較定量解析し、一回の実験に多額の費用が必要となる。次年度には、当該年度の結果を踏まえて新たな検体で解析を繰り返す予定であり、その解析費用は当該年度の残金より充当される。
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