全年度を通じて、全国多施設から様々な原因の好酸球増多症患者を診療する医師からのコンサルトに対し助言や情報提供を行い協力して臨床診断を行った。好酸球増多症候群(HES)が疑われる症例ではRT-PCR法によるFIP1L1-PDGFRA(F-P)キメラ遺伝子検索を行った。また、F-Pキメラ遺伝子以外のPDGFRA関連骨髄系腫瘍が疑われる症例に対しては未知のキメラ遺伝子の検索を行い、染色体転座t(3:4)(p13;q12)を伴う症例で5'RACE法により世界で初めてFOXP1-PDGFRAキメラ遺伝子を検出した。F-Pキメラ遺伝子陽性例以外のPDGFRA再構成を伴う好酸球性白血病が存在するものの、その遺伝子異常は症例毎に異なりほとんどは未知の遺伝子異常である。さらにF-Pキメラ遺伝子陰性例の一部でc-KIT変異検索を行ったが現時点でc-KIT変異は検出されておらずその頻度は非常に稀であると考える。好酸球増多症候群の診断では、多数の生体分子群を一度に網羅的に検出するアプローチが効率的と考える。 様々な好酸球増加症候群の患者既存検体からリン酸化ペプチドを抽出しnanoLC-MS/MSによる質量分析を行い得られた大量のペプチド定量解析データに対し、まずクラスター分析を行った。その結果、HES診断群と反応性好酸球増加症などHES以外の疾患群に大別され、F-Pキメラ陽性群と明らかな反応性好酸球増加症群との間にはリン酸化パターンに明らかな違いを認めた。H25年度はさらに詳細な解析を進めるため、得られた実験データとそれぞれの蛋白の機能との関連性やシグナル伝達経路での位置づけを行うための準備として、実験データに関連する蛋白の機能などの関連情報のデータベースを作成した。データマイニングおよびバイオインフォマティクスによる好酸球増加症に伴う解析を試みており、今後も本研究を継続し、解析を進めていく予定である(未発表)。
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