研究課題
1.骨髄腫細胞上清による骨芽細胞分化の抑制は、TGF-β受容体阻害薬SB431542 (3μM)の添加により著明に回復した。TGF-βで前処理するとBMP-2によるSmad1のリン酸化が抑制されたが、SB431542の添加下ではBMP-2によるSmad1のリン酸化が亢進した。従って、TGF-β作用の阻害はBMP-2シグナルを増強し骨芽細胞分化を誘導することが示唆された。2.Bortezomibは低濃度(2-10 nM)で骨芽細胞分化を誘導したが、この誘導は小胞体ストレス蛋白ATF4のsiRNAにより消失したことより、ATF4はbortezomibの骨芽細胞分化誘導の必須因子と考えられた。しかし、10 nM を超えるbortezomibは過剰な小胞体ストレスを惹起しATF4の細胞内蛋白量を著明に増加するが、骨芽細胞分化をむしろ抑制した。TGF-β受容体阻害薬SB431542とbortezomibの同時添加では明らかな協調的な骨芽細胞分化誘導活性の増強効果は検討した条件では明らかでなかった。Bortezomibは骨芽細胞分化の初期、TGF-β受容体阻害薬は後期に作用すると考えられ、投与のタイミングの検討が必要と考えられた。3.前骨芽細胞株MC3T3-E1との共存により骨髄腫細胞の増殖は促進したが、骨芽細胞の終末分化段階にまで分化させたMC3T3-E1(石灰化結節形成あり)との共存では骨髄腫細胞にアポトーシスが誘導された。4.セリンスレオニンキナーゼPim-2は骨髄腫細胞に構成的に高発現しており、その発現は骨髄間質細胞からのIL-6や破骨細胞からのBAFF、APRILによりさらに亢進した。Pim2 siRNAおよびPim阻害薬SMI16aにより骨髄腫細胞の蛋白の翻訳に関わる4EBP1のリン酸化が抑制され、アポトーシスが誘導された。
2: おおむね順調に進展している
bortezomibとTGF-β受容体阻害薬の併用の効果がうまく出なかった点が課題である。bortezomibによる直接的な骨芽細胞への細胞傷害活性があることが判り、bortezomibの細胞傷害を惹起しない濃度での検討が必要である。また、Bortezomibは骨芽細胞分化の初期、TGF-β受容体阻害薬は後期に作用すると考えられ、同時投与でなく時間差をおいた投与のタイミングの検討が必要と考えられた。
骨髄微小環境による骨髄腫細胞での新規抗アポトーシス因子Pim-2の発現誘導機序と骨髄腫の病的骨髄微小環境がもたらす骨髄腫細胞の生存・薬剤耐性の原因因子としてのPim-2の役割の解明およびPim-2阻害薬の腫瘍進展ならびに骨病変形成に対する作用を培養系と骨髄腫動物モデルで検討する。 Pimキナーゼは腫瘍細胞の生存や代謝にかかわる多くに因子を基質としリン酸化することによりそれらの機能を調節していると考えられている。そこで、Pim阻害薬やPim-2 siRNAの添加の有無でリン酸化が変化する因子を探索し、Pimキナーゼの基質となる因子を同定し、Pimがもたらす細胞内シグナルの制御機構の解明を図る。これらの結果をもとに、Pim阻害薬とAkt阻害薬など他の生存シグナルを抑制する薬剤さらにはmelphalan、dexamethasone、bortezomibなどの現有の抗骨髄腫薬との併用による抗腫瘍効果を検討する。 また、骨芽細胞分化培養系を用い、Pimキナーゼの発現抑制および過剰発現が骨芽細胞分化に必須のRunx2、OsterixやATF4などの転写因子の発現に及ぼす影響、またPimキナーゼによりリン酸化される基質を探索し、Pimキナーゼを介する骨芽細胞分化の制御機構を明らかにする。これらの結果をもとに、これまでに骨芽細胞分化誘導活性が報告されているbortezomibやTGF-β阻害薬などとPim阻害薬を併用し骨形成を増強しうる併用薬の組み合わせを探索する。
試薬類に450,000円、動物モデル用SCIDマウスおよび家兔に350,000円、計物品費に800,000円。海外での学会発表に300,000円使用する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (1件)
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