研究課題/領域番号 |
23591393
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
末岡 榮三朗 佐賀大学, 医学部, 准教授 (00270603)
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研究分担者 |
荒金 尚子 佐賀大学, 医学部, 講師 (20321846)
出 勝 佐賀大学, 医学部, 助教 (00398124)
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キーワード | Lymphoma / HIF-1 / hypoxia / transgenic mouse / BCR-ABL / CML |
研究概要 |
(1)リンパ腫発生のメカニズムの解析:脾臓から分離したリンパ球をT細胞、B前年度から細胞に細分し、抽出したRNAを用いてcDNAマイクロアレイ解析を行った。アポトーシス抑制関連遺伝子の発現亢進と促進遺伝子の発現低下が認められており、更なる解析を進めている。前年度から開始した、HIF-1αトランスジェニックマウスの骨髄移植の表現系の解析を引き続き行った。細胞表面マーカーについては、リンパ球系のマーカーに分布の差はなかったが、高齢マウスにおいて造血幹細胞分画が多い傾向が認められた。 (2)HIF-1α阻害剤によるがん幹細胞様細胞の除去に関する検討: 数種のHIF-1α阻害剤によるがん細胞への影響についてin vitroの検討を行っている。単剤での細胞増殖抑制作用はほとんど認められないため、各種抗がん剤や分子標的治療剤との併用を検討している。 (3)白血病幹細胞様細胞の幹細胞としての性質の維持や治療抵抗性への関与:トランスジェニックマウス骨髄における幹細胞は高齢者マウスにおいて、野生マウスと比較して多い傾向が認められており、HIF-1αノックアウトマウスの解析結果を追試する結果が得られた。またBCR-ABLキメラ遺伝子の導入実験を用いて白血病発症モデルの系は確立し、発症までの期間、生存率の差について解析を進めている。来年度中に結果が確定する予定である。また、遺伝子導入細胞の正嫡正着確認後、イマチニブをはじめとしたチロシンキナーゼ阻害剤の投与による治療効果を検討している。チロシンキナーゼ阻害剤の投与中止後の再発までの期間や再発後の病勢を検討して白血病細胞の治療抵抗性の獲得に対するHIF-1αの作用については現在解析を続けている。以上の結果より研究計画はほぼ順調に経過していると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の計画に記載した内容のうち、HIF-1alpha 高発現によって変動する遺伝子群の解析とリンパ腫発生との関連に関する研究は概ね結果は既に得ており、リンパ腫の治療実験や発症抑制実験については、現在も進行中である。造血幹細胞に対するHIF-1αの作用に関する解析については、幹細胞の量的および質的変化の解析において有意な結果を得ており、機能の解析をさらに進めている。またBCR-ABLキメラ遺伝子の導入実験により、白血病発症マウスの系も確立し、HIF-1alphaの高発現が白血病発症に及ぼす影響についても解析を進めているところである。以上の結果より研究計画はほぼ順調に経過していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)リンパ腫に対するHIF-1alpha阻害剤によるアポトーシス誘導効果の解析 数種のHIF-1α阻害剤によるがん細胞への影響についてin vitroの検討を引き続き行う。単剤での細胞増殖抑制作用はほとんど認められないため、各種抗がん剤や分子標的治療剤との併用を引き続き行っていく。またマウスに発生するリンパ腫の細胞に対するHIF-1α阻害剤の作用を、アポトーシスの誘導効果、細胞周期への影響、変動する遺伝子群の解析を引き続き行っていく。 (2)白血病幹細胞様細胞の幹細胞としての性質の維持や治療抵抗性への関与 トランスジェニックマウス骨髄における幹細胞は高齢者マウスにおいて、多い傾向を認めたことから、BCR-ABLキメラ遺伝子による白血病発症モデルの系において、発症確立、予後、チロシンキナーゼによる治療効果の解析をさらに進める。また、遺伝子導入細胞のチロシンキナーゼ阻害剤の投与による白血病細胞除去効率と、再発に対するHIF-1alphaの影響を検討する。特に、白血病細胞の継代移植の系において、leukemia initiating cellの存在を明らかにするとともに、HIF-1alphaの影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画において、最も資材の投入が必要なのが、今年度にひき続きBcr-Abl遺伝子による白血病発症モデルによる白血病幹細胞に対するHIF-1alphaの作用の解析である。Bcr-Abl遺伝子による白血病発症の遺伝子発現プロファイリングの解析、チロシンキナーゼ阻害剤やHIF-1alpha阻害剤による治療実験に費用を重点的に投入する必要があると考える。 具体的には、Bcr-Abl遺伝子導入のための細胞培養と遺伝子導入試薬、トランスジェニックマウスの交配と維持管理費用、白血病発症の遺伝子発現プロファイリングの解析、成果の発表のため学会出張旅費等を計画している。
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