今回我々は,多発性骨髄腫におけるDNA繰り返し配列のメチル化レベルと染色体異常および予後との関連について検討を行った。これまでにも様々な腫瘍においてその低メチル化が指摘されているが,今回の検討により多発性骨髄腫においてもLINE-1は有意に低メチル化していることが示され,かつその前癌病変であるMGUSは正常コントロールと骨髄腫の中間のメチル化レベルを示したことから多発性骨髄腫の進展に伴いメチル化レベルが段階的に低下する可能性が示された。さらに,LINE-1メチル化レベルと染色体欠失の程度には有意な逆相関を認め,LINE-1が低メチル化している検体ほど染色体欠失が多いことが示された.染色体欠失が生じる場合には染色体欠失領域の両断端が重要と考え,染色体欠失領域の断端と隣接するプローブの間の領域をBreakpointとして抽出し詳細な検討を行った。Breakpointのうち4症例以上で共通して認められるものをCommon break point (CBP)と定義したところ、全ゲノム中に80のCBPが同定された。CBP領域にはその他の領域と比較しLINE-1がより多く存在することが示され,かつ breakpointの数とLINE-1のメチル化レベルには有意な逆相関が認められたことから,LINE-1が高密度であり低メチル化を生じている検体では染色体欠失が生じやすいことが推察された.また,LINE-1のメチル化レベルと予後の相関を検討した結果,LINE-1の低メチル化は独立した予後不良因子であることが示された.多発性骨髄腫においては染色体がnon-hyperdiploidy(染色体の高度な増幅を伴わない)である群が予後不良であることが知られているが,non-hyperdiploidyは染色体欠失に特徴づけられる一群であり,このことは今回の結果と一致すると考えられた.
|