研究課題/領域番号 |
23591400
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
色摩 弥生 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (40291562)
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研究分担者 |
七島 勉 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (10192105)
野地 秀義 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20347214)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / immediate early gene / HuR |
研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)患者好中球におけるimmeidiate early gene (IEG)の誘導不全のメカニズムを、FOSに着目して解析した。その結果、以下のことが明らかになった。[1] MDS好中球では、好中球活性化因子(GM-CSF、LPS)によるFOS mRNA誘導不全は認められないが、ストレス刺激(翻訳阻害薬、酸化ストレス)時のFOS mRNA誘導が健常人に比べて有意に低下している。[2] 翻訳阻害薬によるFOS誘導には、MAPK p38経路を介するFOS転写の増加と、Human antigen R (HuR)のFOS mRNA 3'UTRのAU-rich element (ARE)への結合を介するFOS mRNAの安定化(分解抑制)が関与する。[3] MDS好中球において、翻訳阻害薬のFOS転写促進効果は健常好中球と同等であるが、FOS mRNA安定化効果は減弱している。 以上の所見は、MDS好中球においてHuRを介するIEG mRNA安定化機構に問題があることを示唆する。HuRは、IEG mRNA 3’UTRに結合するmRNA不安定化蛋白やmiRNAと拮抗してIEG mRNA 安定化蛋白である。HuRの標的分子にはp53、細胞増殖に制御するサイクリン類、アポトーシス制御に関与するbcl-2やsirt1、好中球機能上重要なtoll-like receptor等が報告されており、HuRを介するIEG mRNA安定化機構の欠陥は、MDSに特徴的な血球機能低下や無効造血に関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常人とMDS患者血球におけるGM-CSF、LPS、翻訳阻害の三種類の刺激によるIEG発現誘導の比較、ビオチン化RNAを用いたmRNA結合タンパク複合体の解析についてはほぼ計画通りに行った。しかし誘導不全IEGの網羅的検索は、DNAマイクロアレイに必要な量のRNAを好中球から得ることができず、未遂である。増殖力旺盛な細胞株と分化して増殖力を失った好中球では、抽出できるRNA量に差があると考えられる。十分量のRNAを得るためには輸血を要する患者から、計画大量の採血をしなければならないことが判明した。そのため、この部分については計画を変更する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
DNAマイクロアレイを用いる網羅的解析は、real-time RT-PCRによる個々のIEG発現解析に変更する。この場合、解析可能なIEG数が限定されるが、解析対象は、FOS mRNA分解を担う制御因子を同定し、これとHuRの共通の標的分子を優先的に解析する。 FOS mRNA 3’UTRを用いたpulldown assay及びMAPK p38のmRNA安定化への関与の検討の結果、主なARE結合mRNA不安定化蛋白(AUF1、TTP、KSRP)の関与は否定的で、alternativeに考えられる制御因子としてmiRNAが考えられる。このため、今後は好中球でFOS mRNA分解を制御し、HuRと拮抗するmiRNAの同定も試みる。FOS mRNA分解因子が同定できた段階で、平成24年度に計画していた標的分子の検証実験を開始する。その後24年度に計画していた実験に移行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度から繰り越した金額は(DNAマイクロアレイの費用)を、miRNAの定量、発現ベクター、siRNAに振り替える。平成24年度予定分は、miRNA解析後、計画に従って実行する。
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