研究課題/領域番号 |
23591400
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
色摩 弥生 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (40291562)
|
研究分担者 |
七島 勉 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (10192105)
野地 秀義 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20347214)
|
キーワード | 骨髄異形成症候群 / mRNA安定性 / FOS / 翻訳停止 / 好中球 |
研究概要 |
平成23年度に、[1]骨髄異形成症候群(MDS)患者好中球を翻訳阻害ストレスに暴露した場合、FOSのmRNA誘導不全を呈すること、 [2] 好中球における翻訳阻害時のFOS誘導には、MAPK p38経路を介するFOS転写の増加と、Human antigen R (HuR)のFOS mRNA 3'UTR への結合を介するFOS mRNAの安定化(分解抑制)が関与すること、[3]翻訳阻害によるFOS転写の増加はMDSと健常血球で同等であることを明かにした。平成24年度は、MDS好中球におけるFOS mRNA誘導不全の原因を更に追究した。翻訳阻害ストレス下では健常血球においては顕著なFOS mRNA安定化が認められたのに対し、MDS血球では有意にmRNA安定化が抑制されていた。しかし非ストレス下では、MDS血球におけるFOS mRNA 減衰が健常血球に比して速い傾向があったものの、有意差は認められなかった(PLOS ONE, in press)。これらの結果より、MDS血球ではストレス時に特異的に作用するHuRによる安定化効果が不十分であると予測したが、MDS患者のFOS mRNA 3’UTRに変異はなく、HuR蛋白発現量は80%以上の患者で健常人と同等のであった。そのため、HuR以外のFOS mRNA安定性制御因子の発現量をMDSと健常血球で比較したところ、miR-34aとmiR-155の過剰発現と、FOS mRNA coding regionに結合してmRNA安定性を制御するupstream of N-ras (UNR)の減少を検出した。UNRの単独減少の場合と、miR-34a・miR-155両者の過剰発現の場合に、翻訳阻害時のFOS mRNA安定化不全が起こることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄異形成症候群(MDS)患者の好中球におけるFOS mRNA誘導不全が、不十分なmRNAの安定化によることを特定し、論文として報告できた(平成25年度 PLOS ONEに掲載)。真核細胞では、様々な細胞ストレス下で翻訳が停止すること、サイトカイン等好中球活性化刺激によるFOS 誘導はMDSで保たれておりFOS誘導不全は翻訳停止刺激に特異的であることから、翻訳停止させたMDS血球におけるFOS mRNA安定化不全はストレス反応異常を反映している可能性が濃厚であり、MDSの病態解明にとって興味深い結果を得た。しかしFOS mRNA安定化不全の原因候補が予想に反して複数検出されたため、平成24年度以降のマウスの実験は変更せざるを得ない点で、「計画以上に進展している」とは言えない。
|
今後の研究の推進方策 |
FOS mRNA誘導因子が一つに絞られる場合にはマウスを用いて検証実験をする予定だったが、候補因子が複数であることと、FOS mRNA誘導不全の血球異常との関連について更に検討する必要があることから、マウスを用いた検証実験に変えて以下のように研究を進める。 近年LPS刺激を受けた細胞で、c-fos がTNFalphaの転写を抑制していることが示された。TNFalphaは、MDS患者で増加しており、アポトーシスを引き起こして血球減少をもたらしているものとして注目されて久しい。そこでまず、[1]翻訳阻害ストレス下で蓄積したFOS mRNAが訳阻害解除時に一気に翻訳される可能性、[2]ストレス暴露後のTNFalpha産生増加に対してFOSが抑制的に作用する可能性、c-fosとTNFalpha産生機構の相互作用を検証する。それを踏まえて、(1)miR-34aとmiR-155の過剰発現と(2)UNRの減少が細胞ストレス下のFOS誘導不全を介してTNFalpha産生に与える影響を検討し、(1)(2)とMDSの病態との関連を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マウスの購入+飼育のための費用を、miRNA購入、PLOS ONEに受理された論文の掲載料、TNFalpha抗体及びElisa kit購入に振り替える。
|