研究課題
本研究では骨髄間質細胞、細胞外マトリクスとの相互作用によって白血病細胞内に発言誘導されるGalectin-3(Gal-3)の白血病細胞における細胞増殖、治療抵抗性、細胞遊走など病態形成における機能を明らかにし、その制御法開発による新規分子標的治療法の確立を目指してきた。研究2年目にである平成24年度は、Gal-3過剰発現による白血病細胞内での分子制御異常、Gal-3過剰発現によるparacrineな白血病細胞増殖促進のメカニズム、ならびにGal-3によるアポトーシス抵抗性の解除をもたらす薬剤の探索研究を行なった。白血病細胞ではGal-3発現によりアポトーシス抵抗性分子であるMCL-1の過剰発現が誘導されること、PI3K-AKT、RAS-MAPK経路などの活性化が誘導されることが確認され、それらによるアポトーシス抵抗性の解除には、現在の治療薬であるチロシンキナーゼ阻害剤に加え、従来、多発性硬化症の治療薬として使用されているFTY720が有効であることを見出した。FTY720はAKTやERKの活性化を阻害するほか、BIM, BIDなどのアポトーシス誘導分子を白血病細胞内に誘導し、MCL-1過剰発現によるアポトーシス抵抗性を解除する。一方、Gal-3過剰発現によって腫瘍環境内におけるSERPINA1の安定性が阻害され、これによって白血病増殖が促進することが見出された。
1: 当初の計画以上に進展している
従前の研究目標であったGal-3過剰発現による白血病細胞の分子制御異常の一端を解明し、それらを制御しうる新規治療戦略、ならびにその理論的背景を特定することができた。当初、3年計画であった本研究において2年終了時点で、これらの研究結果を得ることができたうえ、それぞれについて2編の論文執筆、ならびに投稿(いずれも審査中)に至ることができたことは当初の計画以上の進展と考える。
白血病マウスモデルによるGal-3のin vivo病態形成における機能の検討、すなわち、Gal-3がin vivoにおいて白血病増殖を促進する可能性を検討するため、以下を検討する(i) Gal-3過剰発現白血病細胞亜株、ならびに親株を2Gyの放射線照射をおこなった免疫不全マウスNOD/SCIDマウスに経静脈的に移植し、白血病モデルマウスを作製する。(ii)ヒト白血病細胞の生着、ならびに増殖について尾静脈からの少量採血によって検討する。同時に体重変化について検討する。白血病細胞の増加が高度となるか、体重減少が高度となった時点で内臓病変について安楽死のもと検討する。(iii)白血病モデルを作成ののち、化学療法剤による治療効果を検討し、in vivoにおけるGal-3過剰発現の治療的意義を明らかにする。Gal-3を標的とした分子標的薬の探索研究Gal-3阻害による抗白血病効果を明らかにするため、Gal-3、ならびに下流分子の制御物質の探索研究公的化合物ライブラリー(文部科学省など)を利用した上記機能を有する小分子化合物の探索を目指す。
「今後の研究の推進、方策」に記載した研究の遂行に必要となる主に消耗品、試薬、実験動物などの購入費として使用する予定である。
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Translational Medicine
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Curr Cancer Drug Targets
巻: 13 ページ: 69-79
10.2174
Annual Review血液2013
巻: 1 ページ: 99-108