研究課題
骨髄環境特異的に慢性骨髄性白血病(CML)細胞に発現が誘導されるGalectin-3(Gal-3)の分子細胞生物学的効果と制御法について研究した。遺伝子導入によりGal-3を安定的に過剰発現したCML細胞株亜株は親株に比して分子標的薬剤であるチロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)やdoxorubicin、cytarabineなど抗がん剤によるアポトーシス誘導に対して抵抗性を示した。また、Gal-3過剰発現によりアポトーシス抵抗性BCL-2ファミリー分子であるMCL-1の発現誘導が認められた。従前、われわれはTKIのBCR-ABL阻害によるCML細胞のアポトーシス誘導において、アポトーシス誘導性BH3-only protein (BIM、BAD、BID、PUMA、BIK、HRK、NOXA、BMF)のうち、BIMの誘導が必須であることを明らかにしてきた。Gal-3により発現亢進するMCL-1は、BIMに結合し、そのアポトーシス誘導作用を中和してしまうため、細胞死誘導効果が減弱すると想定される。これらの結果から、骨髄微小環境内ではCML細胞に対してTKIによってBCR-ABLシグナルを阻害しても、CML細胞を完全に駆逐することは困難となるものと推定される。そこで、BIMと同時にBIM以外のBH-3 only proteinを誘導・活性化しうる薬剤を探索的にスクリーニングしたところ、protein phosphatase 2A活性化剤であるFTY720がBCR-ABL非依存的にBIMならびにBIDを誘導・活性化することでTKIとの併用によりGal-3によるアポトーシス抵抗性を克服しうることを見出した。FTY720は多発性硬化症に対する免疫抑制剤として、現在、すでに日常診療に活用されている薬剤である。既存薬の新たな活用法が見出されたものと期待できる。
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Leukemia Research
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