研究課題/領域番号 |
23591404
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
芦原 英司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70275197)
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研究分担者 |
平位 秀世 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50315933)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / がん微小環境 / がん幹細胞 |
研究概要 |
1.正所性MM担がんマウスを作製し、MM細胞の骨髄内の動態を解析した。MM細胞は海綿骨周囲の骨内膜下に生着し、低酸素マーカーであるピモニダゾール陽性を示した。このことより、MM細胞は骨髄微小環境下で低酸素状態であることが明らかとなった。 2.1%低酸素状態下で長期生存可能な低酸素適応MM(HA-MM)細胞株の作製を試み、現在までに6株(AMO-1、OPM-2、NCIH929、RPMI8226、U266、IM-9)のHA-MM細胞株を樹立した。Oct3/4、Sox2といった幹細胞マーカーのmRNAの発現亢進を認めた。CD138抗原の発現の低下は認めず、またMMの治療標的として有効であると報告してきたbeta-カテニンの発現や、慢性骨髄性白血病のHA株で治療標的分子の一つとして同定したGlyoxalase 1の発現は、MM親株とHA株で発現の差は認めなかったが、TGF-betaシグナルの下流のSmad2のリン酸化亢進を認め、MMにおいてはTGF-beta/Smadシグナル系がMM幹細胞維持に関与することが示唆された。 3.limiting dilution法を用いた正所性MM担がんマウス作製にて、HA-MM細胞株では親株と比して、より少ない細胞数ででも生存期間の有意な短縮を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
仮説を立てた低酸素適応MM細胞株でのWnt経路の亢進が有意に認められないことが今までの結果で推察され、またレンチウイルスを用いた遺伝子導入の効率が芳しくなく現在TCF-binding site/eGFP遺伝子の導入株の作製を中断している。また低酸素適応MM細胞株の幹細胞性の検討においては、MM担癌マウスでのlimiting dilutionアッセイ法による幹細胞性の証明も加え行っているが、施設のマウスケージ収容に限界があり、若干の進捗の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素適応MM細胞株におけるWnt経路以外の幹細胞維持シグナルとして、Smad経路の活性化を示唆する結果を得たため、本経路の解析を進める予定である。またヒトHS-5細胞株との共培養系、およびserial transplantation法を用いて、HA-MM細胞の機能的な幹細胞性の証明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に平成24年度の研究を継続させ、低酸素適応MM細胞株におけるWnt経路以外の幹細胞維持シグナルとしてのSmad経路の解析を行う。骨髄間質細胞との共培養系を併用し、低酸素と間質細胞接着による幹細胞維持機構の関連分子をウエスタンブロッティング、およびreal-time RT-PCR法にて解析する。引き続き、候補分子をRNA干渉法やその機能阻害化合物を用いることで、HA-MM細胞の幹細胞性の変化を検証し、MM幹細胞の治療標的分子を明らかにする予定である。
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