研究課題/領域番号 |
23591406
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
中村 由香 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80364595)
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キーワード | 白血病幹細胞 / 骨髄微小環境 |
研究概要 |
レトロウイルスを用いてRUNX1/EVI1を遺伝子導入したマウス骨髄細胞を、同系マウスに骨髄移植し、白血病モデルマウスの作製をおこなった。既知の報告ではこのRUNX1/EVI1遺伝子を有する骨髄細胞を移植後、8~13ヶ月で白血病を発症するとのことであったが、私の作製したモデルマウスにおいては白血病の発症は認めず、代わりに、血小板数の増多、脾腫を認めた。造血組織の解析においては骨髄、脾臓における巨核球の増多、脾臓での有核細胞数の増多を認め、脾臓での髄外造血と考えられた。骨髄あるいは脾臓の細胞を用いたコロニーアッセイでは、RUNX1/EVI1を遺伝子導入した造血細胞ではコントロールに比し、コロニー継代回数の増加が得られ、RUNX1/EVI1による増殖能の獲得が示唆された。以前、我々の研究室でRUNX1/EVI1の下流と同定した遺伝子の発現を検討したところ、RUNX1/EVI1コロニーにおいて遺伝子発現量の増加が認められた。また、別のモデルマウスとして、レンチウイルスでmiR-9をマウス骨髄細胞に導入し、骨髄移植したモデルマウスを作製している。miR-9はRUNX1 mRNAの3’UTRにseed sequenceを有するmicroRNAであり、急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群の患者検体を用いて検討したところ、1~2割の症例でmiR-9の発現が異常に亢進していることが明らかとなり、miR-9は腫瘍性幹細胞の維持に役割がある可能性が示唆された。そこで、このモデルマウスにおいて造血幹細胞の維持亢進が観察された場合には、同時にニッチの解析を行ない、 幹細胞維持機構に関与するニッチの同定を試みる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
白血病のモデルマウスとして、RUNX1/EVI1を遺伝子導入した骨髄細胞を同系マウスに骨髄移植したが、既知の報告と異なりこれまでの観察期間において白血病を発症したマウスは得られなかった。そのため、白血病発症時の骨髄微小環境の解析が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
RUNX1/EVI1モデルマウスにおける、既知の報告とは違った表現型の造血異常につき、解析をすすめる。特にRUNX1/EVI1の下流の標的遺伝子に着目し関連を調べる。また、脾臓における髄外造血の際の重要はニッチ因子の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養用試薬、遺伝子解析関連試薬、抗体、プラスチック器具等、主として物品費の使用を予定している。
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