研究課題/領域番号 |
23591407
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
|
研究分担者 |
高久 智生 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20408256)
|
キーワード | APL / FTY720 / ATRA |
研究概要 |
本研究ではPP2A活性化作用を有するFTY720とsodium selenateに注目し、これらの薬剤が急性前骨髄性白血病(APL)細胞に対して抗腫瘍効果を発揮するか否かについて、in vitroの系とAPL白血病モデルマウスを用いたin vivoの系で検討することを目的としている。平成23年度の研究から、FTY720とsodium selenateが、APL細胞株NB4を始め、APLの標準治療薬であるATRA(レチノイン酸誘導体)耐性のNB4/ARやUF-1細胞株においても、アポトーシスを誘導することが明らかになった。 これらの結果をふまえて、平成24年度は、FTY720が、in vivoにおいて、APL細胞に対する抗腫瘍効果を有するかという点について、研究を行なった。NB4、NB4AR細胞をNOD/SCIDマウスの皮下に注入し、腫瘤を形成させAPLモデルマウスを作成した。続いて、これらのマウスにFTY720を経口投与し、in vivoにおける抗腫瘍効果について検討した。その結果、FTY720を投与したマウスでは、コントロールに比べて腫瘍の増大が大きく抑制された。また、FTY720の抗腫瘍効果は、ATRA耐性のNB4/AR細胞により形成された腫瘤に対しても、NB4細胞と同程度であった。これらのことから、FTY720は、ATAR耐性のAPL患者に対する有効な治療薬の可能性が示された。現在、FTY720による、細胞死誘導の詳細なメカニズムについて、研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
APL細胞を用いたAPLモデルマウスの作成、ならびにモデルマウスを用いたFTY720によるin vivoでの抗腫瘍効果の判定まで終了しており、当初の計画以上の早さで研究が進行してる。
|
今後の研究の推進方策 |
APLモデルマウスを用いた平成24年度の解析から、FTY720のin vivoでの抗腫瘍効果を示すことができた。今後は、平成23年度に明らかとなった、FTY720によるアポトーシスの誘導が、これまでの知見から予想されたPP2Aの活性化を介したものではないという点について、詳細な分子メカニズムの解明を行なう予定にしている。 我々は、当初PP2Aの活性化がFOXO3Aの脱リン酸化を亢進し、FOXO3Aの核内への移行によりアポトーシスが誘導されると考えていたが、PP2Aの阻害剤であるオカダ酸を用いた解析から、APL細胞では、FTY720のアポトーシス誘導が、PP2Aの活性化を介していない可能性が示唆されている。そこで、FTY720のアポトーシス誘導がどのようなメカニズムにより行なわれているかという点について、細胞生物学的、生化学的な手法を用いて解析する予定にしている。これらの解析から、FTY720によるAPL細胞に特異的なアポトーシスの誘導メカニズムが解明され、ATRA耐性を含むAPL患者に対する新たな治療法を開発する新たな知見が得られることが大いに期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|