研究課題
平成25年度の研究では、これまでの研究で明らかになった多発性骨髄腫の治療におけるHDAC阻害剤の治療標的カルシニューリンが多発性骨髄腫の腫瘍性の維持において果たす役割を明らかにした。カルシニューリンの酵素サブユニットPPP3CAはHSP90と結合するクライアント分子であり、HDAC阻害剤パノビノスタットによりHDAC6の阻害を介してHSP90の分子シャペロン能が阻害され、PPP3CAの蛋白質分解が誘導されることを明らかにした。さらに、カルシニューリンの制御サブユニットであるカルシニューリンBの阻害剤FK506の併用によりパノビノスタットの抗骨髄腫細胞効果が増強することを明らかにし、カルシニューリンが多発性骨髄腫細胞の腫瘍性の維持に重要な役割を果たすことを示した。パノビノスタットとFK506の併用効果は免疫不全マウスへの多発性骨髄腫細胞株のxenograftモデルでも確認され、カルシニューリンが多発性骨髄腫の治療標的となることをin vivoで確認した。症例検体でのmRNAの発現量の解析からは病状の進行とともにPPP3CAの発現が増加することが示唆された。ボルテゾミブはパノビノスタットと同様にHDAC6を阻害するほか、PPP3CAのmRNA発現を直接低下させる作用も持ち、パノビノスタットの併用によりPPP3CAの発現量低下を誘導し骨髄腫細胞生存を抑制することが明らかになった。また、多発性骨髄腫の溶骨性病変では破骨細胞が活性化することが知られているが、破骨細胞においても、パノビノスタットがPPP3CAの蛋白質発現低下を誘導し破骨細胞の形成を抑制することを明らかにした。以上からカルシニューリンが多発性骨髄腫細胞の造腫瘍性の維持と溶骨病変における破骨細胞の形成において重要な役割を果たし、新規治療標的となることが明らかになった。
すべて 2013
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Clinical Lymphoma, Myeloma, & Leukemia
巻: 13 supplement 1 ページ: 47