研究課題
樹状細胞(dendritic cells, DCs)は、様々なサイトカイン産生を介してリンパ球の制御を行ない免疫系のホメオスターシスを維持するとともに、その破綻は易感染性や過剰反応、自己免疫疾患などの免疫異常を引き起こす。本研究ではヒト造血幹細胞由来DCsが免疫系のみならず造血系をも制御していることを明らかにし、造血におけるDCsの機能と病態について新たなパラダイムを提唱することを目的とした。本年度は、分子・細胞レベルの研究として、トール様受容体(TLR)リガンドによる造血幹細胞の分化制御機構を検討した。その結果、TLR3のリガンドであるpoly I:C(合成二重鎖RNA)は、ヒトCD34+細胞の急速なアポトーシスを誘導することを発見した。その経路として、TLR3を介するシグナル経路は関与しないこと、代わりにretinoic acid-inducible gene I(RIG-I) と melanoma differentiation-associated antigen 5 (MDA5)を介するカスペース活性化経路が関与することを明らかにした。これらの結果は、微生物由来の核酸がヒトの造血制御に関与することを示すものであり、感染が造血に及ぼす影響について新たな視点を提供するものである。ワイルドタイプのマウスを用いた二次性血球貪食症候群モデルの作製とその分子生物学的解析は順調に進んでおり、現在、論文を投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画におけるステップ(1)から(4)において、(1)TLRリガンド分子による造血幹細胞の分化・増殖制御をTLR3リガンドを中心に検討して論文として発表した。(2)ワイルドタイプマウスを用いた血球貪食症候群(HPS)のモデルマウス作成、(3) 移植片対宿主病(GVHD)の病態形成におけるHPSの関与とその制御、(4)樹状細胞によるTリンパ球の分化増殖制御のうち、上記(2)は論文投稿中、(3)については論文執筆中である。
上述したごとく、順調に研究が進行しており、論文として発表していくとともに、(4)樹状細胞によるTリンパ球の分化増殖制御に関する解析を進めていく予定である。
(4)樹状細胞によるTリンパ球の分化増殖制御に関する解析を中心に、主に物品費として使用する予定である。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)
Exp Hematol
巻: 40 ページ: 330-341
10.1016/j.exphem.2011.12.002
http://www.imcr.gunma-u.ac.jp/gcoe/jpn/organization/members/sawada/index.html