研究課題/領域番号 |
23591412
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
澤田 賢一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90226069)
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キーワード | 樹状細胞 / 血球貪食症候群 / 腫瘍壊死因子 / 阻害剤 / 造血幹細胞移植 / 移植片対宿主病 / CpG-ODN / 二重鎖RNA |
研究概要 |
二重鎖RNAによる造血幹・前駆細胞の迅速な細胞死について報告した。さらに、造血幹細胞移植後の血球貪食症候群モデルマウスを作成し、その治療法について検討した。C57BL/6Jマウスをレシピエント、ドナー骨髄をC57BL/6J(同系移植)、BALB/c(同種移植)およびBALB/cの脾臓細胞(移植片対宿主病、GVHDモデル)として種々の移植モデルを作成した。血球貪食細胞は、赤芽球に特異的に発現するTER119と単球系樹状細胞に特異的に発現するCD11cの共発現する細胞を指標に定量した。その結果、以下の知見を得た。①造血細胞移植直後は移植の種類に関わらず血球貪食が認められることを発見した。血球貪食はその後沈静化するが、GVHDモデルマウスにおいては移植後6週間を超えても持続した。②移植後の感染モデルとしてトール様受容体(TLR)のリガンドを投与した。TLR9のリガンドであるCpG-ODN投与において最も高率に血球貪食を観察した。③CpG-ODN投与により発熱、脾腫、2系列以上の血球減少を認め、血球貪食症候群(HPS)と診断しうる病態を作成することができた。④CpG-ODN投与によりGVHDモデルマウスは用量依存性に死亡した。TNF-α、インターロイキン-6(IL-6)、インターフェロン-γ(IFN-γ)の著明な増加が認められた。⑤腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤により救命可能であったが、IL-6阻害剤、IFN-γ阻害剤は無効であった。⑥TNF阻害剤の投与によりHPSを阻止することができた。造血幹細胞移植後のHPSの発症にはTNF-αが関与しており、その阻害によって病態を劇的に改善できることを発見した。HPSは予後不良の疾患であり、その治療にTNF阻害剤が有効である可能性を初めて実験的に明らかにしたことは基礎的・臨床的に極めて意義深いことであると思われる。現在、投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状細胞に発現するトール様受容体(TLR)のリガンドが造血に及ぼす影響について検討し、二本鎖RNAによるヒト造血幹・前駆細胞の迅速な細胞死を明らかにして報告した。さらに、樹状細胞による造血制御に関する研究を進めた。本研究は2部からなる。第一部は、ワイルドタイプのマウスを用いた血球貪食症候群(HPS)モデルの作成である。その病態解析によって貪食を誘発する因子として幹線が重要であること、eat meシグナルとfind meシグナルを司る分子を明らかにした。さらに樹状細胞は貪食によってIL-10を産生することによって過剰なサイトカインシグナルを抑えることで生体の恒常性を維持していることを明らかにした。現在Immunityに投稿中(in revision)である。第二部は、研究実績の概要に記載したごとく、造血幹細胞移植後のHPSモデルの作成である。極めて順調に進行しているが、第一部の研究報告が受理されるまで公開するのが困難である。研究自体は極めて順調にいっているものの、全体としては論文化の遅れがあるため、概ね順調と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
第一部の論文受理後、すぐに第二部を投稿する予定である。血球貪食症候群(HPS)の病態解明を更に進めるとともに、その治療について腫瘍壊死因子阻害のほか、インターフェロンの阻害や阻害の時期・方法などを検討し、さらに臨床的知見を深めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文作成費および試薬類の購入を予定している。
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