研究課題
血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)は重篤な炎症反応、微生物感染また様々な疾患でしばしば観察される病態であり、貪食現象は重度の炎症の指標として考えられていたが、その貪食機構や免疫学的な意義は不明であった。研究代表者は、マウスに慢性感染を誘導するリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスを感染させると血球貪食症候群が誘導されることを見出した。この感染モデルではI型インターフェロン刺激依存的に赤芽球の外膜にフォスファチジルセリン(PS)が露出し、且つ、この赤芽球が細胞外ATP(あるいは細胞外UTP)を放出して単球由来樹状細胞を引き寄せていた。この単球由来樹状細胞は、骨髄からケモカイン受容体CCR2依存的に動員され、I型インターフェロン刺激依存的にPS受容体(αV、β3インテグリン、Tim-1、4)を発現してアポトーシスを起こした赤芽球を貪食して抑制性サイトカインIL-10を産生していた。また、このウイルス感染マウスにおいて単球由来樹状細胞による血球貪食を抑制したり、単球由来樹状細胞からIL-10が産生できないコンディショナルノックアウトマウスにウイルスを感染させたりすると、ウイルス特異的細胞傷害活性T細胞の活性が上昇し、血中のウイルス力価が著しく減少した。しかし、一方で、肝障害のマーカー(AST値及びAST値)の亢進及び肝障害が誘導され、半数のマウスが2週間以内に死亡した。これらの結果は単球由来樹状細胞による血球貪食は、ウイルス感染において過剰な免疫応答を制御する新たな免疫抑制機構であることを示唆した(Immunity, 39; 584-598, (2013))。
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Immunity
巻: 39 ページ: 584-598
10.1016/j.immuni.2013.06.019