研究課題
項目1、抗原特異的なCD4およびCD8T細胞からT-iPS細胞を誘導することができるのか上記の項目を明らかにするために、今年度はいくつかの腫瘍抗原ならびにウイルス抗原を用いて、抗原特異的T細胞クローンの樹立とT-iPS細胞へのリプログラミングを試みた。遺伝子導入条件等を詳細に検討した結果、従来はリプログラミングに極めて抵抗性があったCD8陽性クローン化T細胞(細胞障害性T細胞)からのT-iPS細胞誘導に成功した。現在は同手法を用いてCD4陽性クローン化T細胞からのT-iPS細胞誘導を試みている。項目2、リアレンジ済みのTCR遺伝子はiPSCからのT細胞分化にどのような影響を与えるのか上記の項目を明らかにするため分化誘導培養系の最適化を進めたところ、従来の培養系で観察されたダブルネガティブT細胞段階での分化停止が解除され、それ以降のダブルポジティブ分化段階へ進むことが明らかになった。そのため本年度は本項目に関して詳細を検討する代わりに、平成24年度に予定していた項目3の実験へと進んだ。項目3、抗原特異的T-iPSCは機能的T細胞へと終末分化することができるのか上記の項目を明らかにするために、ダブルポジティブT細胞が出現するようになった培養系を用いて、T細胞レセプター刺激とサイトカイン刺激を最適化する実験を行った。その結果、元のCD8陽性T細胞と同様の抗原特異性を保たれた再分化T細胞を誘導することができた。現在、遺伝子発現やエフェクター機能を観察しているが、元の細胞と同様の機能性をもつことが示唆されている。
1: 当初の計画以上に進展している
平成24年度に予定していた、抗原特異的T-iPS細胞からの機能的な終末分化T細胞の誘導に成功した。ヒトT細胞においては、同様の細胞誘導に成功した報告はまだ無く、計画以上の進展と考えている。
機能的CD8T細胞の誘導には成功したものの、実験項目2「リアレンジ済みのTCR遺伝子はiPSCからのT細胞分化にどのような影響を与えるのか」については詳細な実験を行う時間的余裕がなかった。本年度は同項目に対する実験を行うとともに、まだ達成されていない機能的CD4陽性T細胞の分化誘導を試みる。また、機能的CD8T細胞の生体内での機能性の評価を行う。
引き続き研究に必要な細胞培養系の中心に、免疫不全動物を用いた分化細胞の評価にも消耗品費を使用する予定である。研究の進展に伴い研究費が不足する場合は、最終年度前年度応募を検討する。
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Blood
巻: 117 ページ: 6469-6478
http://stemcell-u-tokyo.org/sct/project/