研究課題
今年度はHLA-DPを含むHLA-class IIに対するT細胞免疫応答および液性免疫応答を確認するため、同種移植後の患者検体を用いて解析を行い以下の結果を得た。HLA-DRB1が1アリル、HLA-DQB1およびDPB1がそれぞれ2アリルずつ不一致のドナーから臍帯血移植を受けた白血病患者の移植後末梢血から2つのT細胞クローンの分離に成功した。Short-tandem repeat法によるchimerism解析により両クローンとも患者由来のT細胞であることを確認した。またEBV-LCLを用いたCr放出試験により、いずれもドナー細胞を傷害するが患者細胞は傷害しない細胞傷害性T細胞(CTL)クローンであることを確認した。さらにFCM法により、一方のCTLはCD4陰性CD8陽性、他方はCD4陽性CD8陰性であり、その後の解析により前者のCD8陽性CTLはドナーのみが有するHLA-class Iのある抗原を認識するクローンであることを確認した。後者のCD4陽性CTLはHLA-class II抗原を認識している可能性が高いと考え、様々なHLAを有するEBV-LCLを刺激細胞としたCTLのIFNγ放出試験により対象を絞り込んだ上で、さらにHLA-beta鎖とalpha鎖のcDNAを遺伝子導入したCOS細胞を刺激細胞としたIFNγ放出試験により、最終的にドナーのみが有するHLA-class IIのある抗原を認識することを確認した。一方、移植前の患者血清中のドナーHLA特異的抗体が陽性であるとの結果も得たため、この抗体(血清)が造血幹細胞に対してCDC活性やADCC活性などを示すか否か現在確認中である。
2: おおむね順調に進展している
今年度はHLA-DPを含むHLA-class II全般に対するT細胞免疫応答と液性免疫応答を対象として解析したことで相応の成果が得られた。一方でHLA-DPに限定した成果を得ることについてはやや時間を要している。それらを総合的に勘案しておおむね順調と評価した。今後さらに研究を加速させたいと考えている。
得られたHLA-class II抗原に特異的なCTLおよびHLA抗体の生物学的な意義について解析する。移植後GVHDや再発(GVL効果)など臨床データとの相関を統計学的に解析したり、白血病芽球など腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を測定し抗腫瘍効果との関連を生物学的に解析したりする。またHLA-DPを含むHLA-class II不適合移植を受けた患者の末梢血や骨髄に含まれるclass II抗原特異的CTLや抗体の存在を確認する。またELISA、ELISPOT、LABScreen PRAなどの手法を用いてそれらを定量的かつ経時的に測定し、移植後再発やGVHDの発症および重症度との関連を明らかにする。得られた研究成果を学会および論文発表する。
細胞培養キット、試薬、実験器具等を購入する。備品購入の予定はない。また本研究の遂行に重要と思われる調査・研究あるいは成果発表のための旅費を支出する。平成24年度から平成25年度への繰越金が生じた理由について。例年3月頃に開催される学術集会(欧州造血細胞移植学会)への出席を想定し旅費を計上していたが、平成25年4月冒頭の開催となり、そのため平成24年度に使用する予定であった海外出張旅費を平成25年度へ繰り越したことによるものである。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)
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