研究概要 |
造血幹細胞移植後におけるウイルス感染症は、依然大きな問題である。移植後早期のサイトメガロウイルス(CMV)感染症は、CMV抗原血症またはCMV-DNAのモニタリングによりPre-emptive に抗ウイルス剤を使用することによりコントロール可能となったが、移植後100日以降の後期サイトメガロウイルス感染症は抗ウイルス剤に耐性のことが多く、CMV肺炎などのCMV病に進展した場合には死亡率46%(Boeckh et.al., Blood 2003)と治療成績は極めて不良である。難治性の移植後ウイルス感染症(CMV,EBVなど)に対して、ウイルス特異的細胞傷害性T細胞を投与する養子免疫療法が試みられており、有望な成績が報告されている。しかし、欧米人に多いHLA型を対象としたものであるため、日本人では一部にしか適用できない。 ・ 健常人CMV既感染者におけるCMVpp65抗原特異的CTLが拘束される免疫優位(Immunodominant)なHLAアリルの検索 前年度、健常人血液検体および患者血液検体収集のためプロトコールをヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会に申請し、承認を受けた。現在までに、5組のHLA一致血縁者間造血幹細胞移植患者、ドナーより同意を得て、移植前および移植後 day 30, day 60, day 90, day 180 の検体を保存している。これまでに、我々のグループではHLA-A拘束性2種類、HLA-B拘束性7種類、HLA-C拘束性5種類のCMVpp65由来エピトープを同定しているが、未だ5組すべてのHLAクラスIをカバーできていないため、新たにCMVpp65由来のすべての8-11aaペプチドを含むペプチドライブラリを作成し、引き続きCMVpp65特異的CTL株樹立およびエピトープ同定を行なっている。
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