研究課題/領域番号 |
23591419
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
東 太地 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (10396252)
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キーワード | 細胞免疫療法 / 造血器腫瘍 |
研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)に対して、Aurora Kinase A(AUKRA)をモデル標的とした新たな治療体系として分子標的療法と細胞免疫療法のハイブリッド療法を確立するべく研究を進めている。HLA-A*0201拘束性AURKA207-215 nonamer epitopeを認識するCTLクローン(AUR-2)からT細胞受容体 (TCR) 遺伝子を単離して正常Tリンパ球に移入した人工CTLの効果を確認したが(Blood, 2012)、現在、そのベクターを遺伝子導入するT細胞の内因性TCRを抑制するsiRNAを組み込み、治療用TCRの導入効率を著しく向上させたsiTCR vectorに改良し人工CTLを作成して抗腫瘍効果を検討している(未発表データ)。一方で、AUKRAの検討と並行して、human telomerase reverse transcriptase(hTERT)を治療標的に分子標的薬Bortezomibとの併用を想定して検討を進めている。ATL細胞がhTERTを過剰発現し、かつHLA-A*2402拘束性にhTERT461-469epitopeをその細胞表面に発現していることを確認した。さらに、この抗原をHLA-A*24:02拘束性に認識するCTLクローンかTCR遺伝子を単離して作成したGMP gradeのhTERT-siTCRベクターを用いて作成した人工CTLの抗ATL細胞効果、正常細胞に対する安全性をin vitroさらに、ATL細胞株を移植したマウスを用いた治療モデルを用いて検討し、その有効性を示すデータを得た。この結果を国内外の学会で発表し、国際的医学雑誌Bloodに投稿して受理された(印刷中)。現在、hTERT特異的CTLを用いたATLに対する細胞療法の有効性をさらに高める治療法の開発を目的に、様々な角度からの検討を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aurora kinase-A特異的siTCRベクターの作成に成功したことから、エフェクター細胞の作成効率が向上することから、今後Aurora kinase-Aを標的とした治療法の開発研究も早まると予想している。一方、hTERT特異的siTCRの系は、非常に進展し、日本人の約60%を占めるHLA-A*2402を持つ患者を対象に出来ることから、早いATL治療法開発研究を達成出来た。ATLは患者平均年齢が67歳と高く、その有効性は示されているものの、同種造血幹細胞移植が適応できない症例が大多数である。hTERTを標的とした細胞免疫療法の研究段階での成功は、治療に難渋しているATL患者に新しい治療法を提示できる可能性が高い。その結果を国際的一流誌Bloodに投稿し受理された(印刷中)ことは、研究結果に客観的な整合性があると評価されたものであり、想定したコンセプトの基本は検証できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次の段階は、1)臨床試験の実施へ向けた準備を進めること。2)一方で、現在新たに臨床的に使用可能となった、抗CCR4抗体との併用や、先のBortezomibとの併用効果等を検討して、ATLに対する細胞療法の有効性を様々な視点から改善すること。これらを並行して進めることで、より臨床的有効性の高い細胞療法の樹立を目的としたトランスレーショナルな研究を進めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の内容に従って、細胞培養関連、遺伝子導入試薬、NOGマウス購入と飼育、in vivo imaging実験の費用に研究費を充てる。 また、現在得られた結果を、国際雑誌に論文発表する経費、学会等で成果を発表する旅費等にも、その一部を充てる。
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