研究概要 |
[背景] HHV-6脳炎は同種造血細胞移植後の予後不良の中枢神経合併症である。HHV-6脳炎の発症には生着前免疫反応や生着症候群の関連が報告されており、HHV-6再活性化のみでなく、特有の炎症状態も脳炎発症に関連している可能性がある。本研究では移植早期の炎症状態と脳炎発症との関連について解析を行い、脳炎発症に繋がる病態を決定することを目的とした。 [方法] HHV-6脳炎発症例20例を含む移植症例172例について移植後早期 (day 28以内) のHHV-6 DNA及び17種類のサイトカインの動態について測定を行った。 [結果] 血漿HHV-6 DNA値に関し、HHV-6脳炎発症例のHHV-6 DNAは103,379 copies/ml, 脳炎非発症例のHHV-6 DNAピーク値は1247 copies/mlであり脳炎発症例で有意に高値であった (p<0.001)。血漿サイトカインの解析では脳炎発症例では非発症例に比較してIL-8, -10, -13, MCP-1, MIP-1bが有意に高値であった。一方IL-6は発症例の重症度や予後に関連していた。さらに脳炎発症例の髄液検体を用いてHHV-6脳炎が重症化 (後遺症、脳炎死亡)した症例と非重症例の比較を行った。 HHV6脳炎重症化例は髄液中HHV-6 DNA値が高値 (463,396 copies/ml) であり、(P<0.001)、また髄液中IL-5, IL-6, IL-8が高値であった。[考察] 移植後HHV-6脳炎発症には高レベルのHHV-6再活性化のみでなく、血漿IL-6, IL-8, マクロファージ関連のサイトカインが関係しており、脳炎の重症化には髄液HHV-6 DNA値、IL-6, IL-8が関係していることが示された。これらの結果は移植後早期の特有の免疫反応がHHV-6脳炎発症と関連するとの臨床所見と合致しおり、免疫抑制剤による制御が脳炎の予防や重症化を阻止出来る可能性を示した。
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