研究課題
(1)同種移植合併症予測バイオマーカーの確立に関して、同種造血幹細胞移植後GVHD発症時のバイオマーカー検索は予定症例数100例に対して、49例登録した。同種移植後血球貪食症候群症例においてサイトカインを測定したところTh1とTh2両方の関与を見いだし、論文化した。同種移植後の類洞閉塞症(SOS)に関して経直腸門脈シンチの診断および重症度評価に対する有用性を検討し、論文投稿中である。慢性GVHDと心機能の解析を開始した。(2)消化管GVHDの初期病変の評価と重症化予防法を確立に関しては、移植後GVHD発症症例を対象に経肛門的シングルバルーン小腸内視鏡を用いた消化管GVHDの初期病変の評価を予定症例数20例に対して11例施行した。難治性消化管GVHDに対するステロイド動注療法は予定症例数20例に対して17例施行した。消化管GVHDに対するベクロメタゾンプロピオン酸エステル製剤の内服投与は、薬剤師による腸溶性カプセル製剤の作成を試み、パイロット試験4例を実施し、下痢または嘔気などの症状の緩和が得られ、有害事象の発症がなかった事から、前向き臨床試験を開始した。予定症例数26例に対して、現在2例実施した。(3)同種造血幹細胞移植後非感染性肺合併症の発症危険因子を確立に関しては、同種移植後呼吸機能検査でFEV1.0が50%未満の重症閉塞性細気管支炎症例4例について解析中である。(4)非寛解造血器悪性腫瘍に対する同種移植法の確立に関しては、非寛解期移植後長期生存患者の後方視的解析を行い、慢性GVHDの有無が重要である事を報告した。さらに、移植後大量シクロホスファミド投与によるドナーT細胞除去を用いたHLA半合致移植についてパイロット試験5例実施し、生着の確認および重症急性GVHDの発症がみられない事を確認し、前向き臨床試験を開始した。予定症例数17例に対して、現在8例実施した。
2: おおむね順調に進展している
(1)経直腸門脈シンチの同種移植後類洞閉塞症(SOS)診断および重症度評価に対する有用性に関する論文投稿中である。同種造血幹細胞移植後GVHD発症時のバイオマーカー検索は予定症例数の49%を達成した。(2)移植後GVHD発症症例を対象に経肛門的シングルバルーン小腸内視鏡を用いた消化管GVHDの初期病変の評価は予定症例数の55%を達成した。難治性消化管GVHDに対するステロイド動注療法は予定症例数の85%を達成した。消化管GVHDに対するベクロメタゾンプロピオン酸エステル製剤の有効性の検討は、パイロット試験を終了し、前向き臨床試験を開始した。(3)同種移植後重症閉塞性細気管支炎症例4例を解析中である。(4)非寛解期移植後長期生存患者の後方視的解析を行い、論文化した。移植後大量シクロホスファミド投与を用いたHLA半合致移植についてパイロット試験を終了し、前向き臨床試験は予定症例数の47%を達成した。以上から1研究期間1年で予定症例数の約50%を達成しており、同様に進捗すれば、今年度症例の集積が終わり、観察期間1年を加えても、3年の研究期間内に終了する。
平成23年度に引き続き、(1)同種移植合併症、特にGVHDのバイオマーカーの検討、(2)消化管GVHDの初期病変の評価と重症化予防法を確立、(3)同種造血幹細胞移植後非感染性肺合併症の発症危険因子を確立、(4)非寛解造血器悪性腫瘍に対する移植後大量シクロホスファミド投与を用いたHLA半合致移植の各臨床試験を継続する。順調に症例を集積しており、平成24年度も同様に症例のリクルートを行なうともに、中間解析を行ない、必要な場合は目標症例数の増加、試験期間の延長を検討する。目標症例に達した臨床試験は順次解析し、学会発表および論文化を行なう。
感染症をはじめとした移植後合併症の診断、有効性の確認のための検査費用に加えて、移植後30日、60日、100日、再発時に血液中のリンパ球サブセット(Th1、Th2、TH17、DC、NK細胞)およびサイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IP-10、Eotaxin、basic FGF、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、PDGF-bb、Rantes、TNF‐α、VEGF)測定するための検査試薬経費、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル製剤腸溶性カプセル作成経費として利用する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Acta Haematol
巻: 18 ページ: 182-185
Transplant Proc
巻: 43 ページ: 3927-3932
J Exp Clin Cancer ResHematol
巻: 30 ページ: 36
Int J Hematol
巻: 93 ページ: 509-516
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/