研究課題/領域番号 |
23591424
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
北川 誠一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50133278)
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研究分担者 |
加藤 隆幸 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50343413)
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キーワード | 好中球 / 単球 / リポポリサッカライド / ATP / G-CSF / GM-CSF / IFN-α / IFN-γ |
研究概要 |
ヒト好中球及び単球はLPS刺激に反応してTNF-α及びIL-8を産生した。GM-CSF、IFN-α及びIFN-γはLPS刺激によって誘導されるヒト好中球からのTNF-α及びIL-8産生を増強した。LPS、GM-CSF + LPS、IFN-α+ LPSまたはIFN-γ+ LPS刺激よって誘導される好中球からのTNF-α産生は、G-CSF、ATP及びbenzoylbenzoyl-ATP(BzATP)によって抑制された。G-CSFとATPを併用すると相加的に抑制作用が強くなり、それぞれ異なる分子機序で抑制作用を示すと考えられた。G-CSFはJAK2/STAT3を介してLPS刺激により誘導されるヒト好中球及び単球からのTNF-α産生を抑制することをすでに明らかにしている。一方、ATPはP2Y11受容体に作用し、細胞内cyclic AMPの増加を介して抑制作用を示すと考えられた。一方、LPS刺激により誘導される好中球からのIL-8産生はG-CSFで抑制され、ATP及びBzATPによって亢進した。これらの因子によるTNF-α及びIL-8産生の制御はmRNAレベルで生じていた。ヒト単球においても、好中球におけると同様、LPS刺激よって誘導されるTNF-α産生はG-CSF、ATP及びBzATPによって抑制された。一方、ATP及びBzATPはヒト単球に作用してIL-8産生を直接誘導し、LPS刺激よって誘導されるIL-8産生には影響を与えなかった。これらの結果は、ヒト好中球及び単球におけるTNF-α及びIL-8産生機構は互いに異なり、また、炎症性サイトカインやATPによって異なる制御を受けていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GM-CSF、IFN-α及びIFN-γがLPS刺激によって誘導されるヒト好中球からのTNF-α及びIL-8産生を増強することを確認した。さらに、G-CSFがGM-CSF、IFN-α及びIFN-γの増強作用に拮抗することを確認した。G-CSFが転写因子STAT3を介して抑制作用を示すことをすでに明らかにしている。しかし、GM-CSF、IFN-α及びIFN-γによる増強作用の分子機序は不明であり、また、G-CSFの作用とのクロストークも不明である。現在これらの疑問に対して研究を進めている。一方、LPS、GM-CSF + LPS、IFN-α+ LPSまたはIFN-γ+ LPS刺激よって誘導される好中球からのTNF-α産生はATPによっても抑制され、これらの作用はP2Y11受容体を介していると考えている。現在この点をさらに確認するとともに抑制作用の分子機序の解明を進めている。したがって、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
GM-CSF、IFN-α及びIFN-γの増強作用の分子機序の解明を進めると共に、G-CSFによる抑制作用とのクロストークの分子機序の解明を進める。現時点では、GM-CSF、IFN-α及びIFN-γの増強作用にはSTAT1が関与していると考えている。一方、G-CSFの抑制作用にはSTAT3が関与していることをすでに明らかにしている。したがって、STAT1とSTAT3のクロストークの存在を考えている。また、TNF-α産生に対するATPの抑制作用の分子機序の解明を進めると共に、GM-CSF、IFN-α及びIFN-γの増強作用とのクロストークの分子機序の解明を進める。また、ATP刺激によるIL-8産生の機序は、TNF-α産生抑制の機序とは、その受容体も含め異なると考えており、その分子機序の解明を進める。さらに、好中球で得られた成果をもとにヒト単球に対する作用の解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子機序の解明のために、細胞培養、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー等を行い、また、サイトカイン(TNF-α及びIL-8)の測定を行う。ヒト末梢血単球はエルトリエーターを用いて単離する。これらの実験のために、試薬、培養皿、試験管、抗体、測定キットなどの消耗品代に使用する。
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