研究課題/領域番号 |
23591427
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大森 司 自治医科大学, 医学部, 講師 (70382843)
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研究分担者 |
三室 淳 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10221607)
窓岩 清治 自治医科大学, 医学部, 講師 (70296119)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血友病 / 人工多能性幹細胞 |
研究概要 |
平成23年度は人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立とクローンの選択,またレンチウイルスベクターを用いたiPS細胞の凝固因子発現について検討した.マウス (C57BL/6J)の間葉系幹細胞にプラスミドトランスフェクションにより山中4因子(SOX2, Klf4, Oct3/4, cMyc)を発現させiPS細胞を得た.また,DNAへのインテグレーションが認められないiPS細胞を得るために山中4因子を発現するセンダイウイルスベクターを用いて血友病Bマウス(FIXノックアウトマウス)の線維芽細胞からiPS細胞を樹立した.得られた細胞にはリプログラミングによるNanog, Oct3/4, Sox-2,c-Myc, Klf4の発現を認め,ALP陽性であることを確認した. またiPS細胞中に残存したセンダイウイルスは既報通り,39℃の培養条件で徐々に消失した.次に凝固因子発現iPS細胞を作成するために,CMVまたはCAGプロモーターの下流に血液凝固第VIII因子(FVIII)を発現するレンチウイルスベクターをC57BL/6J 由来のiPS細胞に感染させた.CMVプロモーターを用いた場合は上清にFVIII活性の上昇は認められなかったが,CAGプロモーターを用いるとベクターの用量依存性に50-60%程度のFVIII活性の上昇を認めた.ヌード・マウスに100万個のFVIII発現iPS細胞を投与すると,奇形腫の増大に伴い血中に20-30%のFVIII抗原量の増加を認めた.一方,クローン毎に上清中のFVIII活性や奇形腫を形成した際の血中FVIII抗原量には差があり,現段階では本研究の目的達成にはiPS細胞の段階で血液凝固因子を十分発現しうるクローンを選択し,次年度以降の目的達成に用いる方がよいと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は研究計画に沿って,ほぼ当初の計画通りに研究を進めることができた.特にセンダイウイルスベクターを用いて血友病BマウスからiPS細胞を樹立できたことは大きな成果と考えている.また,iPS細胞が血液凝固因子を十分発現しうる細胞であること,また遺伝子導入後にクローン毎に凝固因子の発現レベルが異なること等,今後の方針を決定するために重要な知見が得られた.当初,赤血球や血小板に共通したプロモーターを検索する予定であったが.上記結果から我々の目的達成のためにはiPS細胞の段階から凝固因子を効果的に発現しうるクローンを得る必要があると考えられた.現段階ではユビキタスなプロモーターとしてCAGプロモーターを用いるのがよいと考えている.プラスミドベクターを用いて作製したiPS細胞から造血幹細胞を得るための基礎的な検討を行ったが,平成23年度中には手技の確立まで至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
センダイウイルスベクターを用いてウイルスフリーのiPS作成が可能となったため,血友病AマウスからのiPS樹立もこの手法を用いて行う.得られた血友病マウスiPS細胞にレンチウイルスベクターを用いて目的の凝固因子を発現しうるiPSを作成する.この凝固因子を発現するiPS細胞からin vitroで造血幹細胞へ分化させ造血幹細胞移植を行い,凝固因子を強発現した白血球や赤血球,血小板を保有する骨髄キメラ血友病マウスを作成する.このマウスの出血傾向の改善を検討すると同時に,同マウスから得た赤血球や血小板の輸血が血友病マウスの出血傾向を改善するか検討する.また,凝固因子を発現する血友病マウス由来iPS細胞由来のマウス作成を試みる.具体的にはiPS細胞とのキメラマウスを通常の胚盤胞へのiPS細胞の注入により作成し,同時にテトラプロイドの手法を用いることでiPS細胞由来のマウスを直接作成することも試みる.凝固因子を強発現させたiPS細胞由来の血友病マウスを得ることができれば,その血友病マウスの出血傾向が改善するかどうか,血中の凝固因子レベル,出血量の定量を行う.また,iPS細胞由来マウス末梢血球の凝固因子の含有量を測定する.また,上述の検討と同様に,このマウスから造血幹細胞移植を用いて骨髄キメラを作成したり,マウス由来の血球の輸血療法が血友病の表現系を改善するかについて評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費については,培地やウイルスベクター,実験動物の購入など消耗品に当てる,血友病BマウスからのiPSにレンチウイルスベクターを感染させ,ある程度凝固因子活性が高いiPS細胞クローンが得られれば,テトラプロイドの手法を用いてiPS細胞由来のマウスを用いた表現型の探索を行う.このキメラマウスの作成についても研究費を使用する予定である.
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