研究概要 |
ワイルドタイプマウス(C57BL/6)より山中4因子(Klf4, Oct3/4, Sox2, cMyc)をプラスミドトランスフェクションにより間葉系幹細胞(MSC)に導入し,iPS細胞を得た.得られたiPS細胞にレンチウイルスベクターであるSIVベクターを用いて血液凝固第VIII因子(FVIII)を遺伝子導入し,細胞をさらにクローニングを行うことで,細胞上清に30-100%の凝固因子活性をもつiPS細胞株を樹立した.この細胞をヌードマウスに皮下投与を行うと奇形腫の形成に伴い,血中の凝固因子抗原量がヒト治療域である4-20%まで上昇した.以上より,iPS細胞は凝固因子を効率よく上清に放出すると考えられた. 次にiPS細胞に効率よく凝固因子活性を発現するためのプロモーターを検索した.サイトメガロウイルスプロモーター(CMV),CAGプロモーター,EF1αプロモーター,またはユビキチンプロモーターの下流にEGFPを発現するレンチウイルスベクターを感染させ,時間経過と共にEGFPの発現率と発現量を検討すると,EF1αプロモーターが最も長期にわたり安定して遺伝子を高発現した. 第IX因子(FIX)欠損マウス(血友病Bマウス)よりセンダイウイルスベクターを用いて,iPS細胞を樹立した.このiPS細胞はキメラ系性能を持ち,またテトラプロイド凝集胚形成法により生体形成能をもつことが明らかとなった.樹立したiPS細胞にFIX遺伝子とEGFP,またはEGFPを強発現する細胞株を樹立した.ヌードマウスにこれらのiPS細胞をOP9細胞と同時に皮下移植をし奇形腫を形成させた.その奇形腫から造血幹細胞領域であるcKit陽性,ScaI陽性,Lineage陰性の細胞分画を採取し,マウスに造血幹細胞移植を行った.移植後に12-17%のiPS細胞由来の造血が確認できた.
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