研究課題/領域番号 |
23591428
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
麦島 秀雄 日本大学, 医学部, 教授 (80183648)
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研究分担者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 助教 (90378141)
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / 胎児由来幹細胞 / 臍帯血 / 間葉系幹細胞 |
研究概要 |
1.臍帯組織に存在する神経堤由来細胞の形質および機能解析:臍帯組織より臍帯動脈を分離後、酵素処理により細胞を単離し、磁気ビーズ法でp75NTR陽性細胞を選別した。この細胞の形質解析およびニューロスフェア形成能を検討した。その結果、p75NTR陽性細胞は、MSCマーカーPDGFRβ, CD90陽性、ペリサイトマーカーCD146, NG2陽性で、内皮細胞マーカーvWF陰性、造血幹細胞マーカーCD34陰性を示した。遺伝子発現解析においてp75NTR陽性細胞は、初期神経マーカーNestin, Musashi-1や、神経堤マーカーTwist, Slug, FoxD3などの発現を認めた。またp75NTR陽性細胞はNestin陽性ニューロスフェアの形成が高頻度に認められた。以上の結果より、臍帯動脈内皮近傍にp75NTR陽性を示す神経堤由来未分化細胞の存在が示唆された。2.臍帯組織に存在するMSC(免疫抑制性細胞・造血ニッチ細胞)の形質および機能解析:ヒト臍帯および胎盤組織の凍結切片を作成し、免疫組織学的に免疫抑制性細胞・造血ニッチ細胞の局在解析を行った。その結果、造血ニッチ細胞のマーカーであるSDF-1が、臍帯・胎盤周囲の羊膜や胎盤内微小血管近傍に高発現していることが明らかになった。3.マウスGVHDモデルの確立:臍帯由来細胞の免疫抑制作用を生体内で検討する目的で、マウス急性GVHDモデルの作出を試みた。ドナーをC57BL/6マウス、レシピエントをB6D2F1マウスとし、急性GVHDが再現性よく誘導できる至適条件を検討した。その結果、レシピエントマウスに11Gyの放射線投与を行い、24時間後にドナーマウスからの骨髄単核球および脾臓CD3+細胞を移植することで、再現性よく急性GVHDを誘導できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた「1.臍帯組織に存在する神経堤由来細胞の形質および機能解析」については、p75NTR陽性細胞を単離し、ニューロスフェアを形成能を有することを確認した。現在、神経系細胞への分化能を検討しており、本年度の目標はほぼ達成されている。「2.臍帯組織に存在するMSC(免疫抑制性細胞・造血ニッチ細胞)の形質および機能解析」、「3.臍帯血組織に存在する多能性幹細胞(MUSE細胞)の形質および機能解析」では、造血ニッチ細胞(SDF-1陽性細胞)やMUSE細胞(SSEA-3陽性・CD105陽性細胞)の局在解析を行い、局在を明らかにすることができたが、細胞の単離および機能解析までには至らなかった。今回検討を重ねた結果、臍帯中に微量に含まれる細胞を効率的に単離するためには、新鮮な臍帯組織から速やか(採取後3時間以内)にコラゲナーゼ処理を行うことが必要であることが明らかになった。このような新鮮な臍帯組織を得られる機会が、平成23年度は計5回と限定的であったため、実際に磁気ビーズ法を用いて単離し機能解析できたのはp75NTR陽性細胞だけにとどまった。そこで、細胞の単離実験の代わりに次年度に予定していたマウスGVHDモデルの作成などを本年度に施行した。そして放射線照射線量や移植細胞数などの条件検討を行った結果、再現性の高い急性GVHDモデルを確立するに至った。このような進捗状況から、研究目的全体の流れのなかでおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、臍帯組織から神経堤由来細胞、免疫抑制性細胞、造血ニッチ細胞、そしてMUSE細胞と多種の細胞を単離し、形質・機能解析を行う予定であった。しかし、細胞の単離が可能な新鮮なサンプルを得られる機会が多くないため、比較的細胞数が多く存在し、単離が容易なp75NTR陽性細胞(神経堤由来細胞)とSDF-1陽性細胞(造血ニッチ細胞)に焦点を当てて優先的に単離し、機能解析を行っていく。p75NTR陽性細胞の神経細胞、グリア細胞への分化能、神経細胞との共培養による神経保護作用、神経栄養因子の分泌能などを検討し、神経再生治療用細胞としての適正を評価していく。また臍帯・胎盤羊膜よりSDF-1陽性細胞を単離し、その形質を解析すると共に造血幹細胞との共培養を行い、造血ニッチ細胞としての機能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞分離用磁気ビーズ、FACS用抗体、造血幹細胞移植実験に用いるNOD-SCIDマウス、GVHDモデル作成のためのC57BL/6およびB6D2F1マウス、神経分化誘導因子などを購入費用に110万円を充てる。また国内学会における研究成果発表の旅費に10万円、論文発表のための英文校閲、学術雑誌投稿料に20万円を充てる。
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