研究課題/領域番号 |
23591430
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
本田 繁則 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00303959)
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キーワード | β3インテグリン / ILK |
研究概要 |
β3インテグリン(αIIbβ3とαVβ3)は血小板、血管構成細胞、腫瘍細胞などに発現しており、血栓症や血管病の発症・進展および腫瘍の浸潤・転移において重要な役割を担っている。しかし、その機能発現制御機構の詳細は明らかではない。私達は発現クローニングの手法を用いてintegrin-linked kinase (ILK)がαIIbβ3の活性化に関わる分子の1つとして同定できた。本研究では、ILKのインテグリン機能発現に関わるメカニズムを明らかにするとともに、ILKが関連する細胞内シグナル分子および新たなβ3インテグリン機能発現分子の探索・同定を目指している。これまで、恒常的に活性化したキメラインテグリンαIIbα6Bβ3を発現するCHO細胞においてILKがPINCHとparvinと複合体を形成していること、PINCHあるいはparvinの何れかをノックダウンするとILK、PINCHとparvin(IPP)の発現低下とともにαIIbα6Bβ3の活性化も低下することを確認できた。 今回、PINCHと結合障害のあるミュータントILKを作製し、ILK欠損ミュータント細胞に発現させた。野生型ILKはαIIbα6Bβ3の活性化を誘導したがミュータントILKは誘導しなかった。インテグリン活性化に必須のタリンとIPP複合体の相互作用についてILK欠損ミュータント細胞を用いて検討した。タリンの頭部ドメイン(THD)を過剰発現するとαIIbα6Bβ3の活性化を誘導した。THDにILKの発現を加えるとより強い活性化を認めたが、THDとIPPの4つの因子を過剰発現するとさらに強い活性化を誘導した。 αIIbβ3はCHO細胞上では非活性化状態にある。αIIbβ3発現CHO細胞にTHDを過剰発現するとその活性化を誘導する。この条件下でILKのノックダウンを行なったところαIIbβ3の活性化が低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミュータントILKの作製と機能解析はおおむね実施できた。ノックダウン実験はインテグリン機能と蛋白発現への影響により評価をしている。一部の標的蛋白で良好に反応する抗体の入手が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたILK-PINCH-parvin複合体のインテグリン機能発現との関連性についてさらに解析を進める。引き続いてILK関連蛋白質のノックダウン実験を行なうとともに新たなインテグリン機能発現因子の同定を目指した探索実験を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体、遺伝子導入試薬、遺伝子ノックダウン試薬、細胞培養関連試薬と器具などの購入、学会参加や論文投稿に関連した費用、謝金などの使用を計画している。今年度の残額は、当初予定していた研究試薬が安く購入できたためであり、次年度の抗体、遺伝子導入試薬などの購入に補填する予定である。
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