研究課題
自己免疫疾患は人口の約5%が罹患する多因子疾患であり、遺伝的素因を持つ個体にウィルス感染などの環境要因が加わることにより発症すると考えられているが、その分子基盤は依然不明である。ステロイド薬や免疫抑制薬に加え、近年では生物学的製剤による治療法が進歩し、一定の予後の改善がもたらされているが、未だ特異的治療法は存在しない。近年、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いた解析により、自己免疫疾患の発症にIL-17やIL-21を産生し病態の惹起に寄与するTh17細胞と抑制性に機能する制御性T細胞(Treg細胞)との分化バランスが病態に深く関与することが明らかにされた。そしてTh17細胞の分化にはIL-6またはIL-21によるSTAT3の活性化とmaster regulatorであるRORγtの発現が必須であることが報告されている。本研究者は、IL-6にて刺激したT細胞の遺伝子発現プロファイルを検討し、SRY- related HMG box-containing gene family (Soxファミリー)に属する転写因子Sox5および転写因子c-Mafが高発現していることを見出した。そして、T細胞特異的Sox5欠損マウスではEAEの発症が抑制され、中枢神経系のTh17細胞が有意に減少しており、In vitroにおいてもSox5欠損CD4陽性T細胞はTh17細胞分化が阻害されていることを見いだした。さらに、Sox5やc-Mafの過剰発現およびSox5欠損マウスやc-Mafのノックダウンを用いた解析により、これらの転写因子が協調的に働いてTh17細胞分化において重要な役割を果たしていることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画1のTh17細胞分化におけるSox5とc-Mafの役割の解明がほぼ完全に終了しているため。
今後、研究計画1.のTh17細胞分化におけるSox5とc-Mafの役割の解明について引き続き行っていく。さらに研究計画2の制御性T細胞分化におけるSox12の役割の解明を行っていく。すでに研究計画2のin vitroにおける実験の大半は終了しており、今後の実験に必要なSox12欠損マウスも準備されている。Sox12欠損マウスのバッククロスが終了次第、in vivoでの実験を開始し、世界に先駆けて自己免疫疾患発症におけるSoxファミリー分子の役割の解明できると確信している。
該当なし
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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