研究課題
自己免疫や慢性炎症が関与する関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の治療の最終的な目標は生体の感染防御反応を妨げることなく異常な免疫反応を特異的に制御することにある。炎症反応や病変への遊走に重要な役割をもつT細胞上のCD26分子の発現とT細胞のエフェクター機能との関係を明らかにし、さらに新たな共刺激リガンドcaveolin-1やその他のCD26結合分子との関連について平成23年度に引き続き解析を行った。(1)機能性T細胞サブセットにおけるCD26分子の発現と機能の解析:Th1細胞以外のTh2,Treg,Th17細胞におけるCD26の発現と臨床病態との関連性はこれまで十分に検討されていない。ヒトのナイーブCD4+T細胞がIL-21+TGF-β、central memory CD4+T細胞がIL-1β+IL-6によりTh17細胞に分化させうることの検証を健常人において行った。誘導されたTh17細胞におけるCD26発現、Th1、Th2,Treg細胞におけるCD26の発現も解析した。誘導の条件によりCD26の発現が異なり、活動性SLE患者T細胞サブセットにおけるCD26の発現低下を認め、血清可溶性CD26との関連性を認めた。(2)CD26とcaveolin-1の相互作用および臨床病態の解析:CD26共刺激シグナル伝達の障害を認めた例はこれまでのところ認められなかった。マクロファージ表面へのcaveolin-1の露出とCD86の発現をフローサイトメトリーにより解析し、血清中の可溶性CD26の測定を行い両者の関連を検討した。(3)可溶性CD26測定にのELISAにおいて、認識するエピトープの異なる2次抗体を用いて測定すると、片方で低値を示す症例を認めた。これはCD26への結合分子の結合も異なることがあることを示唆し、さらにシグナル伝達について検討中である。
3: やや遅れている
平成24年4月から研究室の教授が定年退官となり、実験環境に変化が生じたこと、外来、病棟業務の増加や、病院での管理業務時間の増加にともない実験時間の確保がやや困難となったことが理由である。特に細胞機能を検討する際には検体を可能な限り新鮮な状況で実験に用いるため、実験時間調整に費やされる時間が多くなることも一因である。
実験補助の活用、他の医師の協力をさらに推進する。すでにこれまでの実験結果をもとに特有の臨床病態を呈する症例などにまずフォーカスしての検討を中心として健常人との差異を明確にする。実験時間の確保に努める。状況に応じて平行して進めている実験を調整し、新たな結果を得た場合には再現性などの検討を優先させる。他の仕事の効率化を図りさらなる実験時間確保に努める。
平成23年度に購入した細胞分離、細胞培養試薬、ELISA試薬、サイトカインおよびサイトカイン測定キット、モノクローナル抗体などの追加購入と、新たな解析に必要な試薬、機材などの購入に使用する予定である。また、情報収集や成果発表のための旅費が必要となる予定。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Clin Cancer Res.
巻: 18 ページ: 6326-6338
10.1158/1078-0432.CCR-11-2162