研究概要 |
自己免疫や慢性炎症が関与する関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の治療の最終的な目標は生体の感染防御反応を妨げることなく異常な免疫反応を特異的に制御することにある。炎症反応や病変への遊走に重要な役割をもつT細胞上のCD26分子の発現とT細胞のエフェクター機能との関係を明らかにし、さらに新たな共刺激リガンドcaveolin-1などのCD26結合分子との関連について解析を行い以下の結果を得た。 (1)機能性T細胞サブセットにおけるCD26分子の発現と機能の解析:Th1細胞以外のTh2,Treg,Th17細胞におけるCD26の発現と臨床病態との関連性はこれまで十分に検討されていない。ヒトのナイーブCD4+T細胞がIL-21+TGF-β、central memory CD4+T細胞がIL-1β+IL-6によりTh17細胞に分化させうることの検証を健常人において行った。誘導されたTh17細胞においてCD26発現は有意に上昇していた。活動期SLEではTh17細胞が増加するが、血清中の可溶性CD26は低下を示した。 (2)CD26とcaveolin-1の相互作用および臨床病態の解析:CD26共刺激シグナル伝達の障害を認めた例はこれまでのところ認められなかった。マクロファージ表面へのcaveolin-1の露出とCD86の発現をフローサイトメトリーにより解析し、SLE、RA患者血清中の可溶性CD26とCD86/caveolin-1発現の関連性が示唆された。 (3)血清中のCD26測定時に異なるエピトープを認識する抗体を用いて比較検討すると、一方での測定において低値を示す症例を認めた。これらの症例でのcaveolin-1によるシグナル伝達については変化を認めなかった。
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