研究課題/領域番号 |
23591436
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中町 祐司 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (80379429)
|
研究分担者 |
河野 誠司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (20351512)
|
キーワード | マイクロRNA / 関節リウマチ |
研究概要 |
関節リウマチ (RA) は、炎症性細胞の関節への浸潤と関節滑膜細胞の炎症性増殖およびそれに伴う骨破壊を特徴とする。RAの発症には遺伝的素因に環境因子が関与していると考えられるが病因は不明である。近年の生物学的製剤による治療法は従来の治療法と比して各段に優れているが、無効例あるいは効果減弱例が認められることや治療費が高価なことが問題である。マイクロRNAは近年発見されたメッセンジャーRNAから蛋白への翻訳を抑制・制御する重要な分子であり、1種類のマイクロRNAが複数の蛋白の発現を調整する。ヒトではマイクロRNAが1/3の蛋白の発現を制御していると考えられている。われわれはラットアジュバンド関節炎モデルを用いてmiR-124前駆体を関節局所に投与した結果、関節炎を抑制することを明らかにした。しかし、関節局所の投与では治療法として限定されるため実用化にむけて全身投与での検討が必要である。 本研究の目的は、コラーゲン誘導関節炎モデルでmiR-124前駆体を腹腔内または静脈内投与しマイクロRNAを用いた新しいRA治療法を開発することである。 平成24年度までの実験計画はコラーゲン誘導関節炎モデルでmiR-124前駆体を全身投与する場合に関節局所に移行する最適なドラッグデリバリーシステムを検討し、関節炎発症の有無およびその程度を評価することであった。 今までに、ドラッグデリバリーシステムの文献的検討、生体内で安定なマイクロRNA前駆体の検討およびコラーゲン誘導関節炎モデルの発症実験を行ってきたが、miR-124前駆体の全身投与がコラーゲン誘導関節炎モデルにおいて関節炎を抑制するか否かの結論には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までの実験計画はmiR-124前駆体を静脈内に投与する最適なドラッグデリバリーシステムを検討し、関節炎発症の有無またはその程度を検討することであった。 関節リウマチは炎症性細胞の関節への浸潤とそれに伴う関節滑膜細胞の炎症性増殖および骨破壊を特徴とする。このように様々な細胞が病態形成に関与する。 よって、miR-124を用いた新規の治療方法を検討する場合にはmiR-124がどの細胞に移入することが、より効果を発揮できかを明らかにすることは重要である。また、その効果が持続するためには安定なmiR-124前駆体を用いることも重要である。さらに動物実験を行うにはより少数の匹数で実験成果が得られることが望まれる。 よって、これらの理由により当初の計画より動物実験を行う前のin vitroでの基礎実験を多く慎重に行っていた。当初の計画より少し遅れているのは上記のように動物実験をより適切に行うためである。現在、コラーゲン誘導関節炎モデルの発症実験を終了し、miR-124前駆体投与実験を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
コラーゲン誘導関節炎マウスおよび非関節炎誘導マウスに候補の核酸運搬体を用いて安定なmiR-124前駆体を静脈内投与しmiR-124の各組織・細胞への移行度合および抗関節炎効果を検討する。関節炎は8週のオスDBA/1マウスにMycobacterium tuberucuosis含有不完全FreundアジュバンドにタイプIIコラーゲンを添加したエマルジョンをday0に尾根部に皮下投与、day24にLPSを腹腔内投与し関節炎を誘導する。関節炎はday26ころより発症する。関節誘導時 (day 24)に関節炎マウス、非関節炎マウスに安定なmiR-124前駆体と候補の核酸運搬体複合体を静脈内投与する。関節炎発症の有無およびその程度を関節スコアおよび体重より評価する。Day 27に後肢踵関節組織、胸腺、リンパ節、心臓、肝臓、肺、腎臓、末梢白血球を摘出し組織および細胞中のmiR-124発現量を検討する。またday 35にマイクロCT像および病理組織像より関節炎を評価する。また副作用の影響を観察するために踵関節以外の組織も病理標本を作成し評価を行う。さらに血漿中および関節組織中のサイトカイン・ケモカイン(TNFα、IL-6、IL-1β、IL-17、IL-12、MCP-1、アンギオジェニン)濃度をELISAまたはウエスタンブロット法で検討し、免疫学的機序を解明する。さらに安全性を確保するために、安全性を確認するためにmiR-124a前駆体をヒト正常関節滑膜細胞へトランスフェクションし、mRNAプロファイリングを高感度DNAアレイ(3D-Gene human oligo chip, TORAY)を用いて検討し、オフターゲット効果を含めた、滑膜細胞への影響を分子レベルで検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は当初の計画どおり実験関節炎モデルにおけるmiR-124全身投与による関節炎抑制効果の検討、組織学的および免疫学的機序の解明やその安全性の検討に使用する。 設備は本大学の設備を最大現に利用し、旅費、成果発表、印刷費、通信費、翻訳・校閲、専門的知識・技術の提供、論文別刷は最低限に抑え、実験動物費、試薬等の消耗品にあてる。
|