研究課題
AIRE欠損が自己免疫疾患の発症をもたらすことから、AIREの過剰発現が自己免疫疾患の病態修復に働く可能性が考えられる。そこで申請者らはI型糖尿病のモデルマウスであるNODマウス受精卵にヒトAIRE遺伝子を導入し、AIREの過剰発現によって糖尿病の発症が阻止できるか否かを検討している。AIRE遺伝子導入にあたっては、AIRE本来の発現組織である胸腺髄質上皮細胞(mTEC)で十分な発現が得られることを企図してMHC class IIプロモーターを選択した。こうしてヒトAIRE cDNAをNODマウス受精卵に導入することによって合計4ラインのAIRE-Tg/NODを樹立したが、大変興味深いことに、導入ヒトAIRE遺伝子の発現レベルがもっとも高かった1ラインにおいて、糖尿病の発症が阻止された。この糖尿病阻止作用が、導入遺伝子による内在ゲノム遺伝子の破壊(insertional mutagenesis)によるものでないことを確かめるために、本年度は本ラインにおける導入遺伝子のゲノム挿入点を決定した。その結果、bHLH型転写因子の上流に遺伝子が挿入されていることを突き止めた。他方、他のラインにおいては、導入遺伝子の挿入箇所は、糖尿病抵抗性の本ラインとは異なっていた。NODマウスにおける糖尿病発症には複数の遺伝子座が関与し、その発症メカニズムは複雑で未だに明らかではないが、自己寛容成立機構に働くAIRE遺伝子の導入によって糖尿病の発症が完全に阻止されたことは大変注目に値し、そのメカニズムを明らかにすべく、本年度は骨髄移植の実験を行った。その結果、糖尿病抵抗性には、主に骨髄細胞で発現するAIREが重要な役割を担っていることが判明した。AIREがどのような分子メカニズムによって自己寛容の成立機構に働いているかを解明すべく、本トランスジェニックの解析は重要な意義をもつと思われる。
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