研究課題/領域番号 |
23591439
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川上 純 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90325639)
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研究分担者 |
大山 要 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (50437860)
山崎 聡士 広島大学, 大学病院, 病院助教 (30367388)
玉井 慎美 長崎大学, 保健・医療推進センター, 助教 (60380862)
折口 智樹 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90295105)
有馬 和彦 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30423635)
阿比留 教生 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00380981)
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キーワード | RA / 滑膜細胞 / TSP-1 / TGF-β1 / VEGF / サイトカイン/増殖因子 / 疾患活動性 / パワードプラ |
研究概要 |
私たちはイムノコンプレキソーム解析法を用いて、関節リウマチ(RA)(晩期RAおよび治療ナイーブの早期RA)の血清中にはTSP-1およびPF-4を含有する免疫複合体が検出されることを見出した。PF-4と比較してTSP-1を含有する免疫複合体の陽性率は早期RAでも50%以上と高率であり、PF-4に関しては、早期RAでは陽性率が低い。そこで、RA滑膜組織および培養滑膜線維芽細胞(FLS)を用いたTSP-1のin vitro解析を行った。変形性関節症(OA)と比較してRA滑膜組織では、滑膜表層細胞のTSP-1の発現は強く検出された。種々のサイトカイン/増殖因子を加えて滑膜線維芽細胞を培養し、培養上清のTSP-1をELISAで検討すると、TGF-β1が最も強くTSP-1産生を誘導した。TGF-β1のTSP-1産生誘導はreal-time RT-PCRでも確認され、翻訳修飾によると考えられた。RAの治療経過による検討を、疾患活動性、超音波パワードプラ指数、血清/血漿のTSP-1、TGF-β1およびVEGFの計時的な解析で評価した。抗リウマチ治療が奏功した9症例で検討したが、疾患活動性(DAS28、SDAI)の低下と並行して超音波パワードプラ指数、TSP-1、TGF-β1およびVEGFの減少が明らかに認められた。以上の結果より、RA滑膜組織の炎症性ニッチではTGF-β1などのサイトカイン/増殖因子が過剰に産生され、それが滑膜細胞のTSP-1/VEGFの産生を誘導して、そのバランスで新生血管が豊富なRA滑膜炎を惹起すると考えられた。また、過剰に産生されたTSP-1が免疫系に認識され、抗TSP-1抗体(TSP-1を含む免疫複合体)が誘導されることが示唆された。今後はこの機序の詳細をより網羅的手法を用いて確認し、免疫細胞にも展開していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イムノコンプレキソーム解析法で明らかとなったRAの新たなバイオマーカー:TSP-1に照準を絞り、その機能解析を行った。その結果、TSP-1が滑膜細胞から産生され、その産生機序が血管新生と関連することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
培養滑膜線維芽細胞を用いてのTGF-β1/TSP-1/VEGF axisの詳細をin vitroで検討し、in vivoではより多数症例を用いた臨床評価を予定する。また、滑膜線維芽細胞でのTGF-β1/TSP-1/VEGF axisの確立とともに、この機序の免疫細胞やモデル動物への展開を予定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策に則り、研究費を効率的に使用する予定である。
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