研究課題
関節リウマチの線維芽細胞様滑膜細胞 (Fibroblast-like Synovial cell: FLS) を用いた下記の一連の研究成果が得られた。1:TGFβ誘導性miRNAの標的mRNAの同定に関して、(1)TGFβ誘導性miRNAの予想標的mRNAの配列情報からの予測、(2)TGFβ刺激をしたFLSのRNAサンプルを用いたDNA arrayによるmRNAの網羅的解析により、TGFβあるいはTGFβ誘導性miRNAで制御される標的mRNAの候補選択を完了した。複数の標的mRNAが選択された。2:「TGFβの効果」と「TGFβ誘導性miRNAの効果」の確認と比較に関して、TGFβ刺激の有効性確認の為のリン酸化Smadのウェスタンブロット、miRNA導入効率の確認の為のin situ hybridizationを確立した。TGF刺激と4種類のmiRNAの導入による蛋白発現比較研究により、共通に制御される候補分子の一つとして、ある膜型受容体が選択された。これは、関節リウマチとの関連が期待させるサイトカインの受容体である。しかし、この受容体は1で選択された標的mRNAではなく、mRNA崩壊ではなく、翻訳制御を受けている分子であると想像された。3:LNA miRNA阻害核酸を用いることで阻害されるTGFβ効果の確認に関して、アンチセンスlocked nucleic acid (LNA) が標的とハイブリダイズする事をノーザンブロットにて確認した。今後、Exiqon社 miRCURY LNA™ microRNA Inhibitorsを導入したFLSをTGFβで刺激し、標的とするTGF表現系を阻害するかを検証する。
2: おおむね順調に進展している
達成できている点として以下の3点が挙げられる。1:TGFβ誘導性miRNAの標的mRNAの同定候補を決定する事ができた。2:候補分子のFLSにおける発現を確認できた。3:アンチセンスLNAデザインの完了。予定より遅れている点として、アンチセンスLNAのFLSへの効果の評価が平成23年度中には完了しなかった。最も重要な標的分子の同定ができた点は予定より早いが、アンチセンスLNAのFLSへの導入とその効果(TGFβ誘導性miRNA効果の減弱)の確認を急ぐ必要がある。
TGFβ誘導性miRNAの配列依存性の影響を直接的に証明する目的で、アンチセンスLNAのFLSへの導入とその効果発揮の確認を優先事項と考える。平行して、有力候補分子のFLSにおける意義の探索を行ない、TGFβ → miRNA → FLS機能 の軸を証明していく。
研究計画に沿って、次年度の研究費を使用していく。おもに、培養FLSに対してアンチセンスLNAを導入する実験、標的分子のmRNAと蛋白発現の確認実験、FLSの機能解析に関するアッセイに対して研究費を使用する。
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Clin Exp Rheumatol.
巻: 30 ページ: 332-7
巻: 29 ページ: 906-912